尹錫悦政権で大きく変化した
韓国の安全保障に対する認識
韓国の安全保障に対する認識が、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権になって大きく変化している。
日本政府が12月16日、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略(現:防衛計画の大綱)」「防衛力整備計画(現:中期防衛力整備計画)」の安保3文書を改定する閣議決定をした。これについて、産経新聞は「【安保3文書】支持も批判も曖昧に 尹政権の真意は」と題する記事を掲載し、これまでとは異なる韓国政府の反応を報じている。
これまでの韓国であれば、14日に左派系で文在寅政権を支持してきたハンギョレ新聞が「日本の『敵基地攻撃能力』推進、周辺国の懸念を肝に銘じるべき」と題する社説を掲載したように、日本に対する露骨な警戒心をあらわにしていただろう。
韓国の歴代大統領の中で、「日本が戦後民主主義国になった」とはっきりと認めたのは、筆者の認識では、故金大中(キム・デジュン)氏くらいのものである。他の大統領の多く、特に革新系は日本が右傾化・保守化していると主張し、日本では軍国主義が復活しているとさえ主張してきた。特に、文在寅(ムン・ジェイン)氏とその周辺の認識はそうだったと思う。
韓国は、文在寅政権時代の2021年末の国防白書で、北朝鮮について前々回の国防白書と同様「敵」とは表現せず、また、日本については「パートナー」でなく、単なる「隣国」に格下げし、日本を安保上の協力国から外す動きを示した。むしろ日本による竹島(韓国名「独島」)を巡る領土権主張を再三問題視し、周辺で軍事演習さえ行うなど、日本の竹島への野心を警戒する言動を行ってきた。
文在寅氏は、日本の保守化・右傾化を前提に、日本を協力国ではなく警戒すべき国と位置付けたということである。
日韓関係は、かつて故金大中氏が日本は民主化したと認めたことで日韓パートナーシップ宣言を締結し、飛躍的に改善した。尹錫悦大統領の日本の安保に対し、今回示された認識の変化は、歴史問題を含む日韓関係の改善へと結び付くのだろうか。