文庫新刊書『世界の宗教地図 わかる!読み方』からの一部抜粋で、宗教と世界情勢の密接な関係を、わかりやすく紹介していく。今回は、過激なテロの教義というイメージが定着している「イスラム原理主義」とは何かについて解説する。
「イスラム復興運動」は
なぜ過激化してしまうのか?
イスラム国(IS)、アルカイダなど、テロ組織の名前を聞いただけで、恐怖を覚える人は多いだろう。こうしたテロ組織はイスラム原理主義と結びつけて語られることが多く、「イスラム原理主義=テロ組織」とのイメージをもたれがちだ。しかし、実際には、平和的に福祉活動を展開しているイスラム原理主義者は大勢いる。
そもそもイスラム原理主義とは何かというと、急速な近代化・世俗化に反対し、イスラム法にもとづく国づくりを唱えるイスラム復興運動のことだ。国や社会が西洋文化を取り込んで時代とともに変化したことへの反発ともいえる。
第一次世界大戦でオスマン帝国が敗れると、イギリス、フランスが国境線を引いてイスラム圏に多くの国々が生まれた。ところが、それらの国々は第二次世界大戦後も期待されたほど発展せず、貧富の差が拡大してしまう。
これは「神の前では人間はみな平等である」とするイスラムの教えに反する状況となり、問題解決のために伝統に立ち戻ろうとする動きが起きた。それが開祖ムハンマドが説いた「理想の社会」を構築しようとするイスラム復興運動だった。