ネットの誹謗中傷を取り締まるべく、進む法整備

 先にも書いた通り、以前はネット上の誹謗中傷に対してできることは限られていた。誹謗中傷をした者勝ちで、被害者はその悪意の奔流を浴びるのみであった。

 しかし、言葉の暴力が人の命を奪い得る(自死に至るまで追い詰める)ケースなどを経て、誹謗中傷の加害性が見直され、厳罰化した侮辱罪が2022年7月から施行されることとなった。なお、侮辱罪改正前の法定刑は「拘留(30日未満)又は科料(1万円未満)」で、刑法の罪の中で最も軽いものであったらしい。これが改正後「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」となったのである。

 インターネットで誹謗中傷を行う発信者には匿名性という隠れみのがある。しかし人を傷つけ得る悪質な発信は損害賠償責任(民事)、および刑事上の責任が問われるべきであるとして、発信者を特定する「発信者情報開示請求」を、被害者は行うことができる。よく「開示請求」の四字熟語として聞くアレである。

 開示請求によって得られた個人情報があれば、それをもとに、相手(発信者)に対して民事、および刑事で訴えを起こすことができる。だから「情報開示請求とその後想定される民事・刑事の訴え」という一連の流れを一くくりにして「開示請求」と呼ばれることも、ちまたでは多いようだ。

 また、情報開示請求の訴えが通ると、その旨が発信者に通知されるので、発信者が警戒しおそれて、それ以降誹謗中傷を控える…といった効果が期待できることもあるらしい。

 この情報開示請求は「プロバイダ責任制限法」という法律に定められている制度で、これも改正法が2022年10月に施行された。改正法では情報開示請求がよりスピーディーに、よりやりやすくなり、またSNSでの誹謗中傷に対応しやすくなったのであった。

 かくしてネットの誹謗中傷に対する法制度の整備が着々と進み、これが実際に適用される準備が整ったのである。