誹謗中傷に一矢報いたい!被害者は実在すると意識すべし
筆者はよくゲームをやるが、誹謗中傷するプレイヤーというのは昔から必ずいた。特にFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム/一人称視点でのシューティングゲーム)などのジャンルにおいては、海外のプロを含むゲーマーたちが相手を口汚くののしり、それが容認されてきた(むしろその過激さがアングラでありつつも人気の一因となってきた)歴史があった。
だからであろうか、筆者の主観だが、日本人と対戦するときより、海外のプレイヤーと対戦するときの方があおりや誹謗中傷が発生する確率が高い。「仲の良い友人同士で軽くあおり合う」というコミュニケーションがあるが、「この人はそれをやろうとしているのかな?」と推測されることも多々あった。
そこで、筆者は英語で言い合いができるように英語のネットスラングをわざわざ勉強したが、そもそも誰かとケンカしたくてゲームをしているわけではない。平和に楽しくプレイできるに越したことはないが、悪意ある言葉を投げつけられるとそれを行う相手の品性に腹が立ってどうしようもないのでなんとかして一矢報いたく、その結果が自衛手段としての「反撃ネットスラングの勉強」であっただけである(ここまで来ると加害している気がしないでもないが、筆者の中ではあくまで“自衛”のつもりであった)。自分の手でなんとかしない限りは、自分が覚えさせられた怒りへの落とし前の手段がないと考えていたからである。
しかし「開示請求のハードルが下がった」という、最近の法整備によって得られた後ろ盾は心強い。やはり手間を考えると実際はなかなか開示請求の訴えを起こすまではいかないであろうが、「最終的にはその手段がある」と思えると心の安らかさにつながる。
Twitterのゲームアカウントもしばらく運用していたが、エゴサをするとまれに自分をディスっている内容の投稿が見つかる。大体「下手くそゲームやめろ」みたいな趣旨の投稿である。実際、自分が言われているのを目にすると怒りで血管が脈打って視界がクラクラするくらいの感情に見舞われる。
で、たしかに思い返してみるとその瞬間は下手くそだったのだが、相手にそんなことを言われる筋合いはないので、「嫌だなあ、こんなことするなんてすごく気が重いなあ……」と思いながらわざわざ相手にリプを付けるのである。
そしてこれがけんか腰にならず、うまくやんわり相手をたしなめるように伝えられると、相手からもおわびがゲットできる。常にすさんだツイートを繰り返している人でもいくばくかでも良心を残していれば、「自分がディスった相手はちゃんとした人で申し訳なかった…」と反省してくれるのである。
狂犬のごとく怒りや悪口をネットで撒き散らしている人は別にして、時々不平不満を漏らしているような人は、おそらくディスる相手がこの世に実在しているところがきちんと想像できていない。だから相手の存在がしかと感じられると、その段で「申し訳なかった」と反省できるのである。
“発信者情報開示請求”制度は、ネットで発信する人すべてが加害者になり得ることも意味している。つまり発信する人は加害側にならないように注意深くいる必要があり、発信の際は加害される側(被害者)の実在を常に意識しなければならない。
ネット上に散見される常識を欠いた言葉や文章、態度は、「ネットはリアル(現実)と切り離されている」という見当違いの思い込みが招いているものだ。侮辱罪とプロバイダ責任制限法の改正、および開示請求の利便性向上が、多くの人に「ネットもリアルの一部」ということを改めて知らしめる、いいきっかけとなることを期待したい。