今後、懸念される一段のリスクの拡大
FTXの経営破綻と創業者による投資詐欺の発覚は、先行きを楽観しすぎる投資家が多いことを知らしめる重要な機会になった。今後、世界の金融市場の不安定感は一段と高まるだろう。米欧ではインフレ沈静化のための金融引き締めが長引き、政策金利を中心に金利の上昇圧力は高まりやすい。
それは仮想通貨の価値を下落させる要因だ。投資家保護に関する不安の高まりなどを背景に、仮想通貨の取引も減少する可能性は高い。
また、FTXのような大手でさえしっかりとしたリスク管理体制を整備できなかった、という不安や疑念も連鎖反応のように高まりやすい。それによって、仮想通貨交換業者の経営破綻が増えると予想される。仮想通貨や暗号資産の交換業者などに出資してきた投資ファンドらにとって、いずれも無視できないリスク要因だ。
中でも注目されるのは、米アーク・インベストメント・マネジメントが運用する上場投信=ETFだ。12月以降、同社を率いるウッド氏が、米国の暗号資産取引企業であるコインベースの株を買い増していると報じられた。
しかし、金利上昇懸念や競争の激化、世界経済の後退リスクの上昇などによって多くのIT先端企業の業績は悪化している。バンクマン-フリード氏による投資詐欺の全貌が明らかになるにつれて、仮想通貨やIT関連スタートアップ企業に対する投資を、より慎重に考える投資家も増えるだろう。いずれも株価にマイナスの材料だ。
さらなる株価の下落を避けるために、アーク社のETFから資金を引き揚げる投資家が増えると予想される。その場合、同社は保有するコインベースやテスラなどの株式売却に追い込まれるだろう。そうした展開が現実になれば、IT先端銘柄を中心に世界的に株価が下落する恐れは増す。
FTXの経営破綻とバンクマン-フリード氏の逮捕は、仮想通貨業界にとどまらず、世界の経済と金融市場の悪化懸念を一段と高める要因と考えるべきだ。