NISAは投資のきっかけ

 このように、従来に比べると非常に使いやすく、また限度額も大きく広がったことは事実だ。それでも、NISA自体は単なる制度、つまり「器」にすぎないし、全ての面でパーフェクトな制度というわけでもない。

 例えば運用益に税金がかからないというのは大きなメリットではあるが、これはNISAを利用した場合には、利益も損失も認識しないということを意味する。

 通常、有価証券の売買の中においては、他と合わせて利益が出たものから損失が出たものを差し引くことができる。これは損益通算という制度であるが、NISAはそもそも利益も損失も認識しないのであるから、仮にNISA枠を使って投資をして、損失が出ても他の有価証券の利益から差し引くことはできない。

 したがって、期間が数年で売買をしようと考えている投資家にとっては必ずしもメリットがあるわけではない。むしろ長期に資産形成をするための手段として投資を活用しようという人向きの制度である。

 投資というのは、短期的には価格がどう動くかを読むことは困難である。だが、20年とか30年という長期で考えた場合、途中での波はあっても投資を続けることでおおむね良い結果は出ている。米国や中国に比べると長期に低迷していた日本の株式市場でも、毎月一定金額を20年間にわたって積み立てて投資をしていれば、年率で6%を超える利回りとなっている。

 今回の新しい制度は少しずつでもよいので、投資を始めるきっかけとすればいいのではないだろうか。