コロナとウクライナ、2つの危機で露呈した「MMTの弱点」Photo:PIXTA

存在感薄れたMMT
世界経済はインフレ局面に

 通貨発行権を持つ主権国家は財政赤字の増大によって破綻することはないとして、積極財政政策を掲げる現代貨幣理論(MMT)が、経済の長期停滞脱却の理論として少し前に話題になった。

 日本でも、デフレで苦しむ日本が取るべき経済戦略を教えてくれる有望な理論として2019年頃、注目されたが、それから3年以上たった現在ではほとんど無視されているといってもよい。

 新型コロナ感染禍でも米国をはじめ主要国で国債増発による大規模な現金給付など、MMTを地でいくような財政政策が行われてきたが、ウクライナ危機での資源価格高騰もあって、いまでは多くの国がインフレ抑制で懸命に政策のかじを切りはじめている。

 どうして、そうなったのか。

 その原因を探ると、市場経済における国家の役割と同時にその限界も見えてくる。