決算報・ゼネコンPhoto:PIXTA

行動制限が解除され、入国制限も大きく緩和されるなど、人々の生活は少しずつ「コロナ前」に戻りつつある。だが、一難去ってまた一難。ビジネスの世界では、円安や資材高が多くの企業を混乱の渦に巻き込んでいる。その状況下で、好決算を記録した企業とそうでない企業の差は何だったのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は大成建設、鹿島などの「ゼネコン」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

ゼネコン4社はそろって2桁増収も
通期業績の見通しで明暗

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のゼネコン業界4社。対象期間は22年5~9月の四半期(4社いずれも22年7~9月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・大成建設
 増収率:12.8%(四半期の売上高3890億円)
・鹿島
 増収率:27.0%(四半期の売上高6378億円)
・大林組
 増収率:11.1%(四半期の売上高5141億円)
・清水建設
 増収率:34.1%(四半期の売上高4412億円)

 ゼネコン業界の主要4社は、いずれも2桁増収となった。中でも、清水建設は3割超の大幅増収だ。

 だが、各社の状況は必ずしも順風満帆とはいえない。

 前四半期の記事でも解説したが、ゼネコン業界では昨今、資材高の影響で原価負担が増加しているほか、価格競争によって案件単価が安くなっている。

 建設会社の業界団体「日本建設業連合会」によると、21年1月~22年11月の約1年10カ月で、鋼板(中厚板)は81%、アルミ地金は48%、H形鋼は68%、ストレートアスファルトは82%、それぞれ値上がりしたという。

 資材高によって原価負担が重くなる一方、価格競争によって案件単価が安くなっている状況を踏まえ、日本建設業連合会は22年4月、経団連(日本経済団体連合会)に対して「適正な工事代金と工期」での取引を発注者に呼び掛けた。

 だが、事態はそう簡単に改善しないようだ。大成建設の相川善郎社長は決算説明会で、同社の現状について「大規模案件を中心とした厳しい価格競争には落ち着きが見えてきたが、中・小規模の案件では多数の企業による競争にさらされているものもあり、厳しい競争環境からの脱却にはもう少し時間がかかる」と説明している。

 こうした厳しい事業環境や工事の受注遅れなどを受け、今回取り扱う4社の中には、23年3月期の通期業績予想を下方修正した企業が2社含まれている。

 その一方で、期初の想定よりも売上高・利益の増加が見込めるとして、通期業績予想を上方修正した企業も1社ある。

 利益面も含めた各社の業績と、通期の見通しはどうなっているのか。次ページで、各社の増収率の推移と併せて詳しく解説する。