洋上風力発電施設の建設工事に欠かせないのが、海上で風車を組み立てる専用船「SEP船」だ。大手ゼネコンの清水建設はこのほど、世界最大級のSEP船を完成させた。これにより、洋上風力におけるゼネコン各社の序列に異変が起きつつある。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
「清水が一歩抜けた」とエネルギー関係者
ウクライナ危機が追い風に
風のように海原を駆け巡り、洋上風力発電施設の建設市場を席巻する――。大手ゼネコンの清水建設がこのほど完成させたSEP船「BLUE WIND」の名前の由来である。
SEP船は、洋上風力発電施設の部品であるタービン(羽根)やタワー(柱)を最寄りの港から運び、海上でクレーンを使って風車を組み立てる専用船だ。
SEP船は洋上風力発電の建設工事に欠かせないインフラ。ゼネコンが建設工事を受注できるかどうかは、SEP船の保有の有無で決まると言っても過言ではない。これまでSEP船を保有していたのは鹿島、大林組、五洋建設らで、清水建設がここに加わった。
清水建設のSEP船は約500億円もの巨額を投じられた世界最大級のサイズ。その大きさもさることながら、他社と大きく異なる特徴を持つ。
鹿島や大林組らが保有するSEP船は、風車を組み立てる海上の現場までタグボードなどで曳航(えいこう)するタイプだ。対して清水建設が完成させたのは国内唯一、自ら航行できる「自航式」なのである。現状、国内最強のSEP船と評する声が上がる。
自航式SEP船は、曳航に必要なタグボードなどを傭船(ようせん)する手間やコストが省けるメリットがある。国内外で洋上風力発電プロジェクトに携わるエネルギー業界関係者によると、洋上風力発電プロジェクトを手掛ける事業者にとって、自航式SEP船を保有するゼネコンを重宝する傾向があるという。
前出の関係者は「SEP船が自航式かどうかは大きい。国内ゼネコンでは、清水建設が一歩抜けた」と評価する。
図らずも、清水建設が自航式SEP船を完成させたタイミングも良かった。ロシアがウクライナに侵攻した「ウクライナ危機」が、追い風になったのである。
次ページからは、ウクライナ危機が清水建設に追い風となった裏事情をつまびらかにする。洋上風力発電分野に参戦する鹿島、大林組、清水建設、大成建設、戸田建設、五洋建設の「最新序列」もお届けする。