建設業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する業界横断の枠組みが拡大している。新たに大手ゼネコンの大林組などが参画を決め、発足から1年で加盟は132社にまで膨れ上がった。人手不足など業界が抱える課題の解消が期待されるが、大所帯が故に「同床異夢」に陥るリスクをはらんでいる。唯一参加見送りを決めた大手ゼネコンの出方によって瓦解する懸念もある。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
発足から1年余りで132社が加盟
システム・技術の相互利用など“成果”も
ゼネコン大手の鹿島や竹中工務店、清水建設などが2021年9月に設立したのが、「建設RXコンソーシアム(以下、RXコンソ)」だ。
そもそもは鹿島と竹中工務店がロボット施工やIoT(モノのインターネット化)に関する研究開発を進めるためにタッグを組んだのがきっかけだ。その2社に清水建設なども加わり、計16社が当初の枠組みに参画した。
RXコンソは深刻化する人手不足の解消や生産性の向上を目指し、ロボット施工やIoTに関するさまざまな技術開発を参画企業が協力して進めるのが狙い。具体的には、資材運搬や工事現場の清掃などを手掛ける施工ロボットの活用や、タワークレーンの遠隔操作といった技術の開発だ。
こうした技術の開発にはかなりのコストと手間がかかる。一方で、これらの技術はどの建設現場でも活用される当たり前のもので、各社がバラバラに取り組むよりも共同で開発したほうがメリットは大きい。
加えて、ゼネコンが技術を開発しても、現場でその技術を使うのはゼネコンの下請けを中心とする専門工事の職人たちだ。下請けは特定のゼネコンと結び付きが強いのは一般的だが、他のゼネコンから工事を請け負うこともある。
下請けとしては、各社が開発するロボットやIoT技術の仕様がバラバラだと、毎回使い方を覚えなければならず効率が悪い。だからこそ、RXコンソをプラットフォームとして共通化した技術にすれば、建設業界全体で効率化が見込めるのだ。
各社が激しい受注競争でしのぎを削るゼネコン業界では、ライバル同士が足並みをそろえる業界横断的な連携は異例だが、発足から1年余りで正会員と協力会員を合わせて132社の大所帯にまで膨らんだ。
成果もじわじわと出始めている。すでに資材の自動搬送システムやタワークレーンの遠隔操作といった技術は、参画企業で相互利用が始まった。共同研究は10分野に上る。
事務局メンバーで、清水建設の山崎明常務執行役員は8月のイベントで、こう意義を強調する。
「開発技術の活用が広がり、稼働率が上がればコストが抑えられる。RXコンソはプラットフォームの役割を担う」
だが、決して先行きはバラ色ばかりではない。実は大所帯になったが故に、「同床異夢」ともなりかねないのだ。次ページからは、RXコンソに潜む“死角”を明らかにする。また、今回の業界横断の取り組みから唯一距離を置く大手ゼネコンが、連携を乱しかねない理由も解説する。