不良債権を処理することで
新たに融資ができる

 不良債権は、一貫して利益の中で処理する方針。バルクといって、複数の不良債権を一括してファンドや、サービサーと呼ばれる債権回収会社に売る。そのようにして、不良債権を少なくしていきます。

 同時に、徹底的に引当金*を積む。引き当てているから、融資先が倒産しても追い銭は要りません。こうやって不良債権を処理することで、新たに融資ができる。

 ほとんどの金融機関は、利益を上げられないから、不良債権を処理できずリスクテイクできない。

引当金…将来発生する特定の費用や損失への備え。あらかじめ当期決算の費用に繰り入れておく見積もりの金額のこと。

――今後、融資先で注力していきたい業種は。

山本明弘・広島市信用組合理事長が貫く“現場主義”、「他と同じ考え方をしとっちゃあ、つまらんのです」やまもと・あきひろ/広島市信用組合理事長
1945年山口県生まれ。専修大学経済学部卒業後、68年広島市信用組合に入組。支店長や管理部長などを経て、2005年6月から現職。13年から全国信用協同組合連合会の会長も務める。 Photo by Masato Kato

 一番は、製造業です。今の取引先の中には、造船メーカーもありますが、建設業や、不動産、サービス業などの割合のほうが多い。

 製造業はよそもなかなか離さないし、融資の金利は安いけれど、それでもそこを強化すればうちは一段と飛躍できるんじゃないかなあ、という気がします。

――もう一つの事業の柱、預金はどうやって増やしていますか。

 狭い地域だから、担当者はバイクで1日20、30件と御用聞きのように得意先を回ります。訪問先で地元の人と話をする。

 よそは縮小して、行かなくなる中で、「また来てくれた」と喜んでもらえる。そうやってファンづくりをします。

 さらに、定期預金をすると抽せんで最高100万円が当たるキャンペーンを年2回行っています。

 預金200万円ならば必ず1500円の懸賞金が当たる。400万なら3000円といった内容です。

 これは、地元への還元でもある。賞金総額で年間2億6000万円を還元しています。