浜田宏一氏との対話で知った
日銀の意思決定の不健全さ
安倍政権が掲げるリフレ政策についての議論が活発だ。野党やマスメディア、ドイツ、韓国などが批判する一方、ポール・クルーグマンやジョセフ・スティグリッツなどのノーベル経済学賞受賞者は評価している。
彼らと並んで、リフレ政策にポジティブな評価をしてきたのが、浜田宏一・イェール大学名誉教授、現内閣府参与だ。
彼がまだ安倍政権の内閣府参与になる前の昨年秋、私はお目にかかってお話をうかがう機会を得た。
私の専門は社会心理学や組織行動学で、浜田氏の専門はマクロ経済学のため、お互いの分野については素人であり、突っ込んだ議論はできなかったが、浜田氏から非常に興味深い話を伺った。
浜田氏は日銀の意思決定アドバイザーとして、金融政策に助言をしてきたが、早くからデフレを脱し、ある程度のインフレを推し進めるべきだという、リフレ政策を提言してきた。
そして、その背景にある理論的根拠と、それを実行に移した場合の効果についても、関係者に丁寧に説明をしてきたという。
しかし、安倍政権になるまで白川総裁をはじめとする日銀の幹部は、それを実行に移すことはしなかった。
浜田氏の著書に詳しいが、白川総裁は東大時代の浜田氏の教え子であり、学問的な意味でも人格的な意味でも、これまで最も優れた学生の1人であったという。
その白川氏率いる日銀は、デフレ脱却のための解決策を示せなかった。あるいはデフレを解決するつもりもなかったのかもしれない。しかし、少なくとも国民の目から見ると、日銀は効果的な策を講じることはできなかったように思える。