日本の強み生かした分野で
web3の世界潮流に乗る
1966年生まれ。社会とテクノロジーの変革を標榜し社会課題解決に向け活動中。米マサチューセッツ工科大学メディアラボ所長、金融庁参与ほか要職を歴任。
Photo by Kuniko Hirano
web3の潮流が、アニメなどのコンテンツ産業に代表される、日本が強みを持つ分野でグローバル市場に地歩を固めるきっかけになればと私は考えています。
日本の産業が長期にわたって低迷し、グローバル市場での競争に出遅れ感があるのは、2000年代初頭のIT革命に乗れなかったためです。
理由はさまざまありますが、旧来の大企業中心の産業構造が変わらず、革新的なスタートアップが伸びなかったこと、ITに強い人材が経営者になるケースが少なかったことなどが挙げられます。
これからweb3の波に乗っていくためには、テクノロジーの知識に長けた人たちが、クリエイティブやコンテンツを理解している人たちと一緒に仕事をしていかなければなりません。
ゲーム会社やメディア会社などが上手にエコシステムをつくり、コンテンツ分野のグローバル市場での拡大を狙う。そのためにも、これからはweb3的な発想やテクノロジーを柔軟に活用できるスタートアップ企業の活性化も重要です。
一方、web3で産業構造が変わっていく中、それを担う若い人たちに必要なのは、テクノロジーの理解です。アーティストや法律学者も、プログラムは書けないにしても、テクノロジーをある程度理解していなければなりません。
同じように、web3に関わる技術者は、法律や経済、文化などを学び、分野横断の知識を付けなければ仕事ができません。
新しい時代に合った美学、社会のデザイン、暮らし方……を新しい技術でどのように実現するか。これらを設計するデジタル分野でのアーキテクト人材が、これからの時代にはとても貴重です。
日本の教育は、理系、文系での縦割りですが、その境界をまたがないと、web3の文化やビジネスについていけないと思います。
私がセンター長を務める「千葉工業大学変革センター」では、”脱専門性”をテーマに、既存の専門分野に収まらない研究やプロジェクトを立ち上げるべく準備を進めています。
また、同大学では2022年8月、日本ではユニークなNFTによる学修歴証明書の発行を開始しました。NFT証明書を取得した学生は、就職活動などの際、国境を超えて学修履歴や活動成果を広くアピールできます。
この仕組みは学外にも広げて発展させていきたいと考えており、ソフトウエアを公開して多くの人に使ってもらおうと、活動を進めているところです。