悪化に転じるサムスンの業績

 22年第2四半期以降、サムスン電子の収益は期を経るごとに減少している。過去1年間の業績を振り返ると、21年第4四半期の売上高は、前年同月比24%増の76.6兆ウォン(約7.7兆円)、営業利益は同54%増の13.9兆ウォンだった。続く22年第1四半期、売上高は過去最高の77.8兆ウォンに達し、営業利益は14.1兆ウォンだった。

 ところが、第2四半期以降、まずは売上高が減少し、第3四半期は営業利益も減少した。そうして第4四半期の売上高は70兆ウォン、営業利益は前年同期比69%減の4.3兆ウォンに落ち込んだ(速報値)。特に営業利益の減少は深刻で、14年第3四半期の営業利益(4.1兆ウォン)以来の低水準である。なお、営業利益に関して株式アナリストの予想平均は6.7兆ウォンだったから、収益力の悪化はかなり急だといえる。

 経営陣にとっても今回の決算は想定外だったようだ。近年、四半期が終了した翌月の前半に、サムスン電子は売上高と営業利益の速報を発表し、補足説明は行わなかった。だが今回は、「メモリー半導体市況の悪化によって業績が予想を下回った」と補足説明を行ったという。

 サムスン電子はデータの一時保存に用いられるDRAMで約43%、NAND型フラッシュメモリーでは約34%の世界シェアを持つ(いずれも世界トップ)。22年12月までDRAM価格は8カ月連続で下落し、在庫の過剰感は強い。NAND型フラッシュメモリー価格も下落基調だ。

 それに加えて、米国では金融引き締めによって個人消費が徐々に減少し、企業は在庫調整のために値下げを余儀なくされた。中国では、新型コロナウイルスの感染再拡大や不動産市況悪化、IT先端企業への規制強化によって個人消費を中心に景気が冷えこんでいる。

 iPhoneの生産も鈍化した。メモリー半導体だけでなく、スマホや薄型テレビなどサムスン電子のプロダクト・ポートフォリオ全体で需要は減少している。同社の業績悪化に歩調を合わせるかのように、韓国の輸出減少傾向も強くなっている。