不透明感高まるサムスン電子と韓国経済の先行き
ただ、23年の計画が成果につながるか、先行き不透明感は高まっている。サムスン電子の業績拡大によって輸出を増やし、経済全体の成長と国内の雇用・所得環境の安定を目指してきた韓国経済にとってもそれは懸念材料だ。背景にはいくつかの要因がある。
まず、サムスン電子は中国企業の追い上げに直面している。スマホやデジタル家電、メモリー半導体、有機ELパネル、さらには電気自動車(EV)の分野において、中国企業は急速に生産体制を強化し、サムスン電子の顧客から競合相手に変化している。
また、サムスン電子の構造改革も当初の計画から遅れていると考えられる。コロナ禍における世界経済のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の加速によって、サムスン電子は撤退を表明していた液晶パネル生産を、22年末まで延長した。それはリストラにかかる費用を増幅させ、同社の収益力を追加的に悪化させる要因になり得る。
世界的な景気後退リスクも高まっている。米国、中国、ユーロ圏の経済が同時にマイナス成長に陥る可能性は排除できない。半導体などの先端分野で米中の対立も先鋭化するだろう。それによってメモリー半導体などの需要減少と価格下落が一段と鮮明化する可能性は高い。
いずれもサムスン電子の業績を下押しする要因だ。収益力が低下する中で設備投資が積み増されると、今すぐではないにせよ、結果として財務の不安定化を引き起こす懸念がある。当面の間、サムスン電子の収益、事業運営体制の不安定感は一段と高まると予想される。
そうした展開が現実になれば、中国向けを中心に韓国の輸出には追加的なブレーキがかかるはずだ。加えて、サムスン電子の株式を手放す投資家が増え、韓国の株式市場全体の下落懸念も高まるだろう。急激なサムスン電子の業績悪化によって、韓国経済の先行き不透明感が一段と高まると予想される。