文庫新刊書『世界の宗教地図 わかる!読み方』からの一部抜粋で、宗教と世界情勢の密接な関係を、わかりやすく紹介していく。今回は、中国政府による新疆ウイグルと香港民主化運動弾圧の背景にある、宗教との関係性について解説する。
強制労働問題で
「新疆綿」が使用中止に
2021年、日本国内のアパレル業界で新疆綿の使用を中止する動きが広がった。
人権問題を重視する欧米の大手アパレルメーカーが続々と使用中止を決めたのを受け、厳しい判断を迫られた形だった。
新疆綿の産地は、中国の新疆ウイグル自治区。綿花生産で世界第2位の中国のなかで8~9割を新疆綿が占めるだけに、使わないとなれば影響は甚大だ。中国では使用中止を表明したブランドの不買運動が起こる騒ぎにもなっている。
この新疆綿の問題は、強制労働にある。新疆ウイグル自治区に暮らすウイグル人は、トルコ系のイスラム教徒。つまり、中国で圧倒的多数を占める漢民族とは文化も見た目も大きく異なる。ウイグル人として独立を求める運動はかねてより続いており、デモのほか襲撃や爆破などのテロも起きている。
中国政府が弾圧を強めるなかで、綿花畑での強制労働の問題が世界的に注視される事態となったのだ。