物知りぶった投資家を困らせたければ、米国株の推移をダウ工業株30種平均の観点から論じてみるといい。プロの投資家たちは、計算機が登場する前の1890年代に考案されたダウの荒っぽい算出方法よりも、時価総額で加重平均された、より洗練された指数をはるかに好む。だが「ダウが300ドル下落」すれば、それが株式市場にとって悪い日なのは誰にでも分かる。隣人にS&P500種株価指数やラッセル2000指数で相場の下落を語るのは、気温を華氏ではなく摂氏で伝えるようなものだ。ダウ平均のもう一つの短所――見方によっては長所かもしれない――は人間のバイアスを反映していることだ。こうしたバイアスは、アクティブ運用に対するインデックス運用のメリットの一つを打ち消してしまう。構成銘柄を巡っては、S&P500でさえ銘柄選定委員会の恣意(しい)性に左右されるが、ダウ平均を構成する30銘柄は定期的に入れ替わるため、その影響はより大きい(いずれの指数もS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが算出を手掛ける。ダウ・ジョーンズはもはや同社に出資していないが、ダウ・ジョーンズが発行元のウォール・ストリート・ジャーナルの編集者は銘柄選定委員会のメンバーだ)。