フィル・カンパニーPhoto by Kazuki Nagoya

東証プライム上場で駐車場の「空中店舗」開発事業のフィル・カンパニーが2023年度に異例の取締役体制を発足させる。監査等委員を代表取締役社長に据え、創業者の大株主を外部から取締役に招く一方、現社長も取締役として留任する。昨年から会社側と大株主が経営体制を巡り対立してきたが、双方が経営陣に加わる“折衷案”をまとめた。当事者らへの直接取材で、対立の発端となった企業統治改革の「落とし穴」に加え、異例の新体制の発足に至った内幕を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

「空中店舗」開発企業で異例の新体制
監査等委員が社長、大株主が取締役に

 対立していた経営陣と大株主が同じ船に――。東証プライム上場で、平面駐車場の「空中店舗」開発事業のフィル・カンパニーが1月末に公表した2023年度の新経営体制は、上場企業では異例ずくめだった。

 新体制では、現在は監査等委員を務める金子麻理氏が代表取締役社長に回るほか、創業者で同社株を10%強保有する高橋伸彰氏(高の文字は正しくは“はしごだか”)が外部から取締役に復帰する。現社長の能美裕一氏は、社長職を外れるものの、取締役に留任する。

 取締役会は現在、12人の取締役で構成されているが、新体制では5人減らし、7人で構成する。社外取締役には、IT企業のカヤック創業者の柳澤大輔氏を新たに招く。

 新体制は、上場企業では異例のポイントが三つある。一つ目が、そもそも経営を監督する立場の監査等委員が、執行側の社長に回ることだ。執行側の役員が監査等委員に回るケースは大企業などでよく見られるが、逆は珍しい。

 また、創業者とはいえ外部の大株主を取締役に迎え入れるのも異例だ。オリンパスがアクティビスト(物言う株主)のバリューアクトから取締役2人を招いた例はあるが、上場企業が株主を取締役に迎え入れる動きはまだ限られる。

 そして三点目が、社長が取締役に留任することである。そもそも今回の新体制発足の背景には、能美氏ら現経営陣と大株主である高橋氏による経営体制を巡る対立がある。経営陣と株主の対立の結果、経営陣が会社を去るケースも多い。だが、新体制でも能美氏は引き続き重要な立場で経営に参画する。

 異例ずくめの取締役会が発足することになったのはなぜか。今回、ダイヤモンド編集部は金子、高橋、能美の3氏にインタビューし、内幕を聞いた。

 実は、経営陣と大株主の対立の発端は、皮肉にも東京証券取引所などが普及を促すコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の存在があった。

 次ページでは、会社と株主の対立を生んだ企業統治改革の「落とし穴」を明らかにする。また、当事者の証言を基に、両者はどのように異例の“折衷案”を探り、委任状争奪戦を回避したのかを明かしていく。