米国のベビーブーマー
雇用ひっ迫を背景とした引退延期
2023年1月11日のNew York Timesに「Staying Power」と題して、米国におけるベビーブーマーの退職に関する記事が掲載された。現在の米国における雇用ひっ迫を踏まえての論考と推察される。
実際、米国の雇用市場は、力強い回復を見せている。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も、「この国の構造的な労働力不足は、すぐに解決される可能性は低い」と述べている。
同紙では、労働者のプールが少ないと、企業は社員の賃金、そして商品やサービスの販売価格を上げざるを得ず、マクロ経済全体としてインフレ抑制が困難になると警告する。同時に、米国におけるマクロ的な雇用のひっ迫を緩和させてきたのは、ベビーブーマーによる引退の延期だとユニークな指摘をしている。
リーマンショック直後の2009年において、60代前半の米国人のうち、働いていたのは46%だった。しかし、その20年後の2019年(コロナ直前期)では、60代前半の実に57%が勤務を続けていた。
この背景には、60代前半の米国人の健康状態の改善が考えられる。工場での力仕事の減少と、オフィス仕事の増加も影響したであろう。そして何より、リーマンショックで貯えを失くした60代前半が働く必要があったことも大きいと推察される。