ビジネスマンの男女写真はイメージです Photo:PIXTA

「管理職」と聞くと、「難しそう」「自分にできるかな?」など、いいイメージを持っていない人もいるかもしれません。しかし、もしあなたにそのチャンスが来たら、管理職になることを恐れないでください。その理由をお話しします。

※本稿は、佐藤 優『君たちの生存戦略 人間関係の極意と時代を読む力』(ジャパンタイムズ出版)の一部を抜粋・編集したものです。

褒めるのは人前で? 叱るのは一対一で?

 部下を持ったときに気を付けなければいけないのは「嫉妬の管理」です。特定の人を評価すると部下の間で嫉妬が生まれます。そうすると、モチベーションが下がったり、足の引っ張り合いのような事態を招くなど、マイナスの作用が生まれてきます。周囲の嫉妬によって、能力のある人間が力を発揮しにくくなったり、人間関係のストレスで精神的に追い詰められることもあります。

 成果を上げている部下に対して別の部下が嫉妬心から強く反発している場合、「振る舞いには気を付けた方がいい」と嫉妬されている側に助言してもあまり意味がありません。嫉妬する側は相手が何をしても嫉妬しますし、自身が嫉妬などという低劣な感情を持っているとは思っていないからです。嫉妬している側にアプローチして、その人間のよい点を評価して褒めるとよいでしょう。

 かつては、部下への接し方として、「褒めるときは人前で、叱るときは人がいない場所で」と言われていましたが、今はこの鉄則が当てはまりません。特定の人を皆の前で褒めると逆効果になってしまう可能性があります。ほかの人のやきもちを買うからです。皆の前で厳しく叱るのは、なおさら上司としてはやってはいけないことです。

 優秀な若い人の中には、親や学校の先生から強く叱られた経験があまりないという人もいます。私たちの年齢から上の世代は、親や先生から怒鳴られることなども多く、免疫がありました。ところが、その部下にそうした免疫がない場合、少しでも強い口調で叱ると、人格を全否定されたかのように深刻に受け止めてしまう可能性があります。落ち込んで出社拒否になってしまったり、場合によってはパワハラで訴えられてしまう可能性さえあります。

 そのため、上司の心構えとして、人前であれ一対一であれ基本的に部下を叱らないことが大事です。会社における指導の仕方はその人の育ち方に合わせる。褒めて育てるということを基本として、褒める量を変えることで対応するしかないでしょう。