山中氏はこれで終わるならと終業後に100万円を用意して、会社が入っている30階建てのオフィスビルのエントランスに、堂々と停車しているワゴン車の運転席に座る藤原に渡しました。助手席には山中氏を見ようともせず、タバコをふかす由紀恵が座っていました。

妻の治療費として
さらに100万円を要求してきた男

 藤原は「二度と由紀恵に近づくな」と言い残して走り去りました。山中氏はあっさりと終わってホッとしたのもつかの間、翌日も藤原から会社に電話がかかってきて「由紀恵が体が痛いと言っているから治療費としてもう100万円払ってくれ」と言うのです。

 山中氏は藤原からの金銭の要求は終わりそうにないと感じ、会社にバレることを恐れました。山中氏は勇気を振り絞り、決着をつけるため会って話したいと申し出ると、藤原は意外にもあっさり了承しました。日にちを決めて電話を切りすぐに弁護士を探したところ、内田弁護士にたどり着いて今回の相談に至ったそうです。

 そこからは内田弁護士が話を引き取り続けました。

「藤原には山中氏を金づるにしようとの意図がありありとうかがえます。私が代理人となり示談交渉を進めますが、本日山中氏が払う慰謝料をもって最終決着とするため、藤原がお金を受け取った直後に私が声をかけ、これがどういう意味合いのお金なのか双方の認識をはっきりさせ、今回の支払いをもって成立とする示談交渉をします。その後示談書を郵送で交わすのですが、藤原が示談交渉の際に住所の虚偽申告する可能性があるため、自宅を把握しておきたく、自宅割り出し調査をお願いしたいのです」

 美人局は、反社会勢力が組織的に関わっているケースが最近増えてきており、探偵は依頼者や対象者が反社に関わる調査は行わないことが通例です。ただ、今回のケースは依頼者は反社ではなく、自由恋愛という認識の被害者であることと、何度か仕事上でお世話になっている内田弁護士が間に入っての示談交渉のための調査だったため受けることにしました。