インターネット証券のパイオニアとして1990年代に注目された松井証券。外部から招聘された和里田聰社長は、SBI証券の手数料無料化には追随しないと宣言。特集『ネット証券 ゼロの衝撃』(全6回)の#5では、外国為替証拠金取引(FX)の強化など多角化を加速させる。その狙いと成否に迫る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
「無料化では追随しないが、対抗策はある」
外資系出身社長が進める戦略は?
――SBI証券は今年9月末までに、国内株式売買手数料完全無料化を宣言しています。どう対応しますか?
まず、まだ無料化は実行されていませんし、実際にされるかどうか分かりません。ただ、SBI証券は2019年から完全無料化を行うと宣言してきたわけで、どこかでゼロにするんだろうということを想定してわれわれもやってきました。
19年の段階では、収益に占める国内株式の売買手数料の比率が今よりも高く、私が社長になって2年半の間に多角化を進めてきました。完全無料化で全面的な追随はしませんが、対抗策はあります。
松井証券は1918年に創業した老舗だが、創業家の松井道夫前社長が98年に国内初の本格的なインターネットによる株式の取引サービスを開始。業界のパイオニアとして注目を集めた。しかし株式の取引を軸としたビジネスモデルを貫いたため、口座数は150万程度にとどまり、多角化を進めたSBI証券や楽天証券に収益規模でリードを許す。国内株式売買手数料は収益の4割以上と高く、SBI証券の完全無料化の影響を大きく受ける可能性がある。外資系証券出身の和里田聰社長に、対抗策とその成否を語ってもらった。