さわかみ投信の澤上篤人創業者が「金融緩和バブル崩壊はいよいよ本番」と断じる理由Photo by Kuninobu Akutsu

さわかみ投信の創業者である澤上篤人氏は、この半世紀にわたって投資運用の世界に身を置いてきた。特集『「お金」大全』(全17回)の#2では、その澤上氏が、いよいよ金融マーケットが崩壊し、経済社会が大混乱に陥ると断じる。マネーがこれから暴れだす。なぜ、そう確信するのか?(聞き手/ダイヤモンド編集部論説委員 小栗正嗣)

金融緩和バブルの崩壊を真っ向から否定
「心配するな」と言う人の裏事情

――澤上さんはマネー経済が危機的状況にあるとして、警鐘を鳴らし続けています。

 債券市場も株式市場も崩落する。金融緩和バブルの崩壊は時間の問題です。

 そもそもこの40年、先進国を中心に金融を緩和し資金を大量に供給すれば、経済は成長すると言われてきました。リーマンショック、コロナ禍を経て、さらに緩和の深掘りが進められ、その結果どうなったか。実際に経済は良くなったのか、豊かになったのか、一度も検証されていない。おかしいでしょう。まさに金融緩和バブルなのです。

――ただし、澤上さんのように金融緩和バブルが崩壊すると断言するのはごく少数派です。

「大丈夫だ」「心配ない」と言う人たちのほとんどは、このバブルに乗っちゃっている。実は、運用のプロである機関投資家もそうなんです。

 彼らは、マーケットトレンドを追い掛けようとする。短期運用が主体になってきているからですが、理由はそれだけではありません。

 そもそも年金など機関投資家というのは、自分の投資判断で上昇相場から降りようとはしません。上昇トレンドが続く中で自ら降りたら、ライバルに投資成績で負けるだけ。自分が首になるリスクもある。そんなリスクは負えないから、最後の最後までトレンドに付いていく。

 音楽が鳴っている間は踊り続けなきゃいけない。だからこそ、バブルじゃない、崩れるわけがないと思いたい。現に居心地はいいし、現状が変わってほしくない。そして最後の最後には、みんな一緒に落っこちてしまう。米ブラックマンデーのときも日本のバブル崩壊のときもそうでした。

 みんなが一緒であれば、機関投資家の運用は結構楽なんですよ。なぜなら、どうしようもありませんでした、不可抗力でしたと言えばいいのだから。無責任極まりない。

 世界の運用業界は、1970年代前半まではもっとまともなものでした。その頃から運用に携わっている私から見ると、異常な事態がどんどん進んでいる。歴史の生き証人として、おかしい、おかしいと言い続けてきたわけです。投資運用はマーケットを追い掛けるものではなく、将来価値を先取りしていくもの。それを忘れてはいけません。