トヨタ新社長も重視する電気自動車“BEV”、旗振り役の欧州が抱える致命的な「3つのリスク」次世代BEVへの注目が急速に強まるなか、旗振り役の欧州はリスクも抱えている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

トヨタ新社長も言及したBEV
パワーゲームの材料にも

 トヨタ自動車の次期社長・佐藤恒治氏は、「EVファーストの発想」という言葉を就任会見で口にした。同氏は、2026年を目標に、次世代BEV(電気のみで走行する車)に最適化した電池、プラットフォーム、製造方法による次世代レクサスを投入していくと言う。

 トヨタ自動車はこれまで、BEVを志向する世界の大手他社とは一線を画し、内燃機関とモーターを動力源とするHEVに軸足を置いてきた。佐藤新社長の会見をトヨタ自動車の変心と捉え、「BEV敗戦」など批判的な報道も散見される。

 ただし、BEVの普及には政策的な背景がある。例えば、最大市場の中国では、BEVなど新エネルギー車の購買時に政府が付与する補助金が2022年末まで延長され、年末の駆け込み需要が活性化された。自動車取得税の免除も2023年末まで延長された。

 BEVはすでに、世界中の国や地域、競合メーカー、新興参入者の思惑が複雑に交錯するパワーゲームの材料になっている。書生じみた科学的、論理的な正しさだけでは、このゲームに勝つことはできない。

 実際、車両やエネルギーの製造、走行、解体・廃棄など全ての段階を含めたLCA(ライフサイクルアセスメント)でのCO2排出量は、HEVに比べてBEVが劣位にあるという指摘もある。しかしすでに、世界の流れはBEVに傾いているようにも見える。