インターネット上の広告などを見ていると、まさにダークサイドではないかと思うものもたくさんあります。

 たとえば、美容系のプロダクトでよくあるのが、「美容液を塗っただけで、20歳若返って見える!」といったような広告です。推定50代の女性がそのプロダクトを使用したことで一気に若返り、まるで20代に見える写真を並べている広告などもよくありますが、合理的には考えられない変化であり、信頼に足るものとはいえません。

 ダイエットのサプリメントの広告などでも、使用前と使用後の写真の縦横比率を明らかに変えているものも見られます。

 某飲食チェーン店が、ある特定商品の販売を告知する広告を出しながら、実際には売り切れ続出で販売できなかったために、おとり広告といわれ、「景品表示法違反」で措置命令を受けたこともありました。企業広告に対して消費者庁や広告審査機構が厳しくチェックをしたり、是正勧告を出して指導したりする理由は、消費者の価値を守るためです。

 このように、マーケティングにはお客さまに対する倫理観やモラルが強く求められているのです。

「ダークサイド」と
「過小評価」のジレンマ

 それにしても、なぜこうしたマーケティングのダークサイドが生まれるのでしょうか。

 企業はブランド名やロゴ、パッケージ、キャッチコピー、パンフレット、広告、PR、SNSなどお客さまに対するコミュニケーションアイデアを通して、プロダクトの持ち得る便益と独自性を訴求していきます。その段階で、訴求する内容が実際のプロダクトの価値よりも大きくなれば、お客さまの「過剰期待」を生んでしまいます。過剰期待を生めば、とりあえず1回はプロダクトは売れる可能性がありますが、一過性の売上で終わる可能性も高くなります。

 一方、実際のプロダクトが提供できる便益と独自性よりも訴求する内容が弱い場合は、「過小評価」になります。そうすると、「潜在的な売上の未実現」が起こります。もっと売れるはずなのに売れないということになってしまうのです。こうしたジレンマの間で、マーケティングに関わる人は悩みます。

 企業にとっては、過剰期待をさせてしまうか過小評価されてしまうかというジレンマの間で、一過性の売上ではなく、継続性のあるかたちでプロダクトが提供する便益と独自性をきちんと訴求していくことが重要になってきます。