マーケター・西口一希が明かす「絶対やってはいけない広告」と秀逸な広告写真はイメージです Photo:PIXTA

マーケターとして、P&Gやロート製薬、ロクシタン、スマートニュースで多くの実績を残してきた西口一希氏。同氏が、ビジネスの現場で本当に使えるマーケティングの活用法を解説します。今回は、マーケティングで絶対やってはいけない「ダークサイド(暗黒面)」と、西口氏が「秀逸」と絶賛する製品プレゼンの両面をご紹介します。本稿は、西口一希氏の著書『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)より、その一部を抜粋・編集したものです。

陥ってはならない
マーケティングの「ダークサイド」

 さまざまなプロダクトのマーケティングに携わるなか、「よい広告って、どんなものですか?」と聞かれることがあります。非常に難しい質問ですが、それに答える前に、反対の「ダメな広告」について考えてみましょう。それは、消費者を欺く広告です。マーケティングには「ダークサイド(暗黒面)」があるのです。

 プロダクトを開発して販売する際には、「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」の2つが必要になります。プロダクトアイデアとは、商品やサービスがどんな便益と独自性を持つかに関わるアイデアです。コミュニケーションアイデアとは、プロダクトの便益と独自性をお客さまに伝え、購買行動を起こしてもらうための訴求のアイデアです。

 コミュニケーションアイデアでは、キャッチコピーをつくったり、見せ方や、伝え方を考えたりするわけですが、プロダクトが提供しえないものまで提供できるかのようにコミュニケーションアイデアを工夫して(操作して)伝えようとするのが、マーケティングのダークサイドです。

 たとえば、広告と実際の商品が違うケースもそれにあたります。実際に店頭で商品を見て「がっかりした」という感想を持つお客さまもいます。もちろん、提供する側からしてみれば、お客さまををがっかりさせたいと思って広告をつくっているわけではないでしょう。ぜひ買っていただきたい、食べていただきたいという思いでつくっているはずです。

 ただ、期待していたものと実際の商品があまりにも違う場合は、お客さまによる「価値の再評価」が行われ、その結果として離れていく人もいます。

「いや、それでもやはり商品自体はいいから買い続ける」というように、そもそもプロダクトの提供している便益が強力であれば、継続して購入してくれるお客さまもいます。広告に関しては多少がっかりしたけれども、購入し続けるという人もいるかもしれません。そのあたりの判断基準は難しいですが、やはり企業としては、プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアの間にあるダークサイドに落ちないよう、高いモラルを持ち続ける必要があります。