世の中には、こうしたダークサイドをクリアしてプロダクトの価値をさらに高めている事例もたくさんあります。中でも私が素晴らしいと思うのは、2008年にAppleが「世界最薄のノートブック」としてMacBook Airを発売した際のスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションです。

 薄くて軽量なノートブックをプレゼンするため、壇上でジョブズが書類用の封筒を取り上げて中からMacBook Airを取りだすと、会場は大盛り上がりに。当時のノートパソコンは分厚かったため、封筒に入るということに、そこにいる全員がびっくりしたのです。このジョブズのパフォーマンスは、プロダクトがどれほど優秀かをわざわざ言葉にしなくても、見ているだけでその便益と独自性が伝わるものでした。言葉がいらないので、世界中の人にも伝わります。

 しかも、嘘や過剰なことはいっさいいっていません。非常に秀逸なプロダクトとそのコミュニケーションアイデアだったといえるでしょう。

理想はビジネスに関わる全員が
マーケティングをしていること

 マーケティングというのは、ひと言でいえば「継続的な価値づくり」です。お客さま(WHO)は誰で、そのお客さまが価値を見いだすプロダクト(WHAT)の便益と独自性は何か。この「WHOとWHATの組み合わせ」を見つけて実現し、それを拡大していくことがマーケティングのすべてだと。

 つまり、誰かのために、何らかの価値を生みだして提供する。

 考えてみれば、私たちの仕事はすべてこうしたマーケティング的な要素で成り立っているといえます。総務でも、経理でも、企画でも、法務でも、どの部門でも、誰かのために何らかの価値を生みだそうとしています。常にWHOとWHATがあり、そのための手法としてHOWがあるのです。

 ですから、営業部門やマーケティング部門以外でも、ビジネスに関わる人は全員マーケティングをしている、ととらえることもできます。