債務残高(対GDP)の収束値

内閣府推計の財政試算、楽観的な3つの前提が将来世代に禍根を残す債務残高(対GDP)の収束値 *内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(2023年1月24日)の低成長ケース(ベースラインケース)などを前提

 日本財政が大きな転換点を迎えている。従来はGDP比で約1%だったわが国の防衛費が約2%に拡充されるほか、日本銀行の金融政策転換の可能性も高まっているからだ。

 この状況下、今年1月、内閣府が「中長期の経済財政に関する試算」(以下試算)の最新版を公表した。この試算は、内閣府が年に2回推計し、今後10年程度の財政の姿を国民に示すもので、今回はインフレ率や長期金利、防衛費増額の影響に専門家の関心が高まっていた。

 ふたを開けてみると、低成長ケースと高成長ケースのいずれも、試算が前提とするインフレ率は2023年度で1.7%しかない。インフレ率は既に2%を超えているにもかかわらずだ。