EVが内燃機関の自動車に
全て置き換わることはない理由
この連載でも以前から述べてきたが、筆者はEVは一定数の需要はあっても、現在のガソリンやディーゼルの内燃機関の自動車に全て置き換わることはないと考えている。それは、現在のBEVはバッテリーのみをエネルギー源とするため、寒冷地での使用が困難である、火力発電がメインの地域ではCO2削減に貢献しない、といった限界があるからだ。
それに加えて、この100年間に日本や欧米の自動車メーカーが築き上げてきた自動車産業の技術やノウハウの積み重ねは、単にパワートレインの違いだけで非連続に追い越せるものではなく、そもそも自動車として求められる安全性能など、連続的にこれからも生き続ける技術やノウハウが、トヨタをはじめとした既存の自動車メーカー大手には残り続けるからだ。
今日、EVブームに乗って勢いを強めている世界の2社がテスラとBYDであり、驚くほどの急成長を遂げている。EVという非連続なイノベーションによって、これらの企業が自動車産業というこれまで極めて参入障壁の高かった産業にしっかりと食い込んできたことは確かだが、テスラは自動運転の安全性で度々トラブルが指摘され、今回、BYDは日本で使用が認められていない六価クロムをボルトのさび止めなどに使用していた問題が明らかになった。
BYDの六価クロム問題は筆者のYouTubeチャンネル「長内の部屋」(https://www.youtube.com/watch?v=AqICmSo8jHQ)でも解説したが、六価クロムは毒性が強く、日本では法規制ではないものの、日本自動車工業会の自主規制によって使用が禁止されている。ここに新規参入企業としてのBYDの死角が垣間見られる。