犯罪集団はどのようにして
ターゲットを絞り込むのか
広域連続強盗事件やこれまでの特殊詐欺において、活用されたのがこの闇名簿である。
そもそも公に提供されている名簿があるのをご存じだろうか。
インターネットで「名簿 業者」や「名簿 リスト」と検索してほしい。個人情報が含まれる名簿を取り扱う業者が散見されるだろう。彼らが所有するデータは、同窓会名簿から一戸建て居住者や通販購入者(高級衣類、アクセサリー)、投資家名簿や富裕層名簿など、さまざまである。
これは、大いに問題があると思わないだろうか。
一部、「2022年4月の改正個人情報保護法により、05年以降に入手した個人情報が提供できなくなった」と掲載している業者もいるが、にもかかわらず、こうした名簿情報が販売・提供されている。
名簿業者によれば、営業でのアプローチに使用することを想定しているのだそうだが、犯罪集団がフロントカンパニーを作り、新規営業先を得るためと偽って名簿を閲覧・購入するのは容易だろう。
こうした手法で、例えば、通販で高級アクセサリーやその他の高額商品を購入した人物の名簿、不動産投資した人物の名簿などを入手し、それらの名簿に共通する人物を見つけ出すことで、資金にかなりの余裕がある人物が特定できる。
そして、その人物に前述のように電話でアプローチして、独居か高齢者か、穏やかな性格かなどを確認し、現地を下見すれば、強盗の準備ができてしまう。
また、前述の通り、今回の広域連続強盗事件では家の図面まで作成していた事実があるが、配送業者や引っ越し業者から情報を買ったり、家のリフォームや納品を装った手口で自宅内を見たりする手法もある。
犯罪集団は、これらの手法を複合的に組み合わせ、収集した情報をしっかりと分析して犯罪を実行しているのだ。
加えて一点、極めて重要な事実がある。
闇名簿においては、前述の名簿業者では知り得ない公的機関によるものと思われる情報が含まれる点だ。
例えば、口座情報や納税状況、さらに家族構成を把握できる戸籍などが自治体から流出することで、その闇名簿はより恐ろしい内容になる。
恐らく、金銭の授受や“ゆすり”などを通じて、自治体の協力者から情報を収集しているのだろう。
このように、犯罪集団の手は広く深く社会に浸透しているのだ。