韓国も、若者中心に「コスパ重視」へ意識が変わりつつある

 MZ世代を中心としたこうした変化について、現在の韓国社会の状況が関係していると指摘する声がある。

 元々は韓国では「小さいよりは大きく」「古いよりは新しく」「安いよりは高く」という感覚で物を選ぶ傾向が強かった。しかし、ここ数年の物価高騰は国民の生活に大きな影響を与えている。

 ダイソーやユニクロといった日本企業が韓国で展開を広めた影響もある。当初は「安い物を売っている」というイメージが先行していたが、実際に、日本式の接客スタイルや「コスパの良い商品を売る店」という認識が定着すると、受け入れられるようになった。ユニクロについては「NO JAPAN」といった反日の標的にされた時期もあったが、今では人気も定着している。

 海外旅行者にとって「韓国はショッピング天国」だったのは、遠い昔の話である。今や、最後の砦とされてきた、外食や公共交通料金までも高騰が続いている。物選びも「安くて質の良い物」というコスパ重視へと変化していることを感じるのだ。

 こうした現象を表した造語も誕生している。「日常で確実に感じられる小さな幸せ」という意味を略して「小確幸」と呼ぶなど、やはり世相を反映しているようである。

 日本のZ世代と共通する点があるかも知れないが、韓国のMZ世代も親世代のように韓国が好景気に沸いた時代をリアルで知っているわけではなく、物は豊かであっても、社会の閉塞感や未来への不安を常に痛感している世代である。

 加えてこの3年間、新型コロナにより社会生活にさまざまな制限がなされ、それが緩和された今、その反動が人々の行動にも表れている。我慢をするよりも、食べたいときに食べたい物を食べ、欲しいときに欲しい物を手に入れるという「こだわりの精神」にもつながっているのではないか。

 パリパリ精神の韓国人が、なぜあれほど嫌っていた行列を好きになったのか。その背景にはさまざまな韓国社会の変化や、若い世代の意識の変化があると思えるのだ。