日本初にして唯一の「退職学」の研究家である佐野創太氏が3月1日、『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)を上梓した。今の日本では年間800万人が転職を希望するものの、実際行動に移す人は半分以下の300万人しかいないという。500万人の腰を重くさせている「転職活動におけるストレス」について、著者の佐野氏本人に話を聞いた。(清談社 鶉野珠子)
転職活動に伴う
2つのストレス
現在は独立しフリーランスとしてエージェントの育成やマーケティングの企業顧問などをしている佐野氏だが、会社員時代は数回の転職経験があるという。自身の転職のほか、転職エージェントとしての経験、そして多くの転職希望者から相談を受けるなど、さまざまな活動・経験を通して、「転職活動におけるストレスをゼロにしたい」と思ったことが、本書を書くに至った経緯だと話す。
「ストレスの大きな原因は2つあります。一つは、内定までにかなり時間がかかること。転職活動は往々にして、現職と並行して行います。したがって、面接やエージェントとの面談は退勤後や休日に行うことになりますが、それだと日常生活で仕事と転職活動以外に時間を割けなくなってしまうのです。内定までにかかる期間は平均で3.5カ月というデータもありますが、これはあくまで平均。半年~1年以上かかる人も珍しくありません」(佐野氏、以下同)
1年以上も仕事と転職活動が生活の中心となり、それなのに新たな職場が決まらないというのは、心身ともに相当なストレスがかかるだろう。
「もう一つの原因は、転職活動は『運』に左右されやすいということです。内定までの期間を長引かせている原因でもあります。多忙を極める人が転職を考えたとき、さまざまなサポートをしてくれる『転職エージェント』を頼るというのはよくあるケースでしょう。しかし、親身になってくれるエージェントに巡り会えるかどうかは運次第なのです」
さらに、人によってはもう一つ、ストレスになることがあるのだとか。
「自分自身がそうなのですが、『早期退職している』『無職の期間がある』などの『キャリアブランクがある』と思われてしまう人や、子育てや介護で時短勤務を希望している人など、いわゆる“ワケあり人材”の転職は、かなり難しいのが現実です。日本はまだまだワケあり人材に対して理解が進んでいない企業が多く、『無職の期間は何をしてたの?』『フルタイムで働ける人以外は…』など、転職活動中に厳しい言葉をかけられることもあります。そういう経験を重ねると『自分は市場価値が低いんだ…』と自己肯定感が下がり、余計なストレスを感じてしまうのです」