ユニセフと複数の国際NGOによる
注意喚起が続いている
施設への訪問にルールはなく、いつでも出入り可能で子どもたちと自由に接触ができてしまう施設も多く存在します。シェムリアップ州はアンコールワットを含む世界遺産アンコール遺跡群を擁する観光地であるため、世界中から集まる観光客の寄付を主な運営資金とする施設も多数存在し、子どもたちの生活よりも訪問者の都合を優先した状況がつくりだされている現状もあります。
その寄付金が子どもたちに正しく還元されるのであればまだ良いほうで、前述のように運営者が私的に流用し、子どもたちの権利が侵害されることもあるのです。観光客が安易な気持ちで施設を訪問しないよう「Children are not tourist attractions」というキャンペーンがユニセフと複数の国際NGOによって行われ、観光客が訪れるレストランなどにポスターを掲示することで注意喚起が続いています。
近年、施設運営者が自身の利益を優先させ、子どもの社会的養護よりもむしろ寄付金集めの見世物にしている施設の存在が政府の調査により少しずつ明るみになり、こうした問題の温床となる施設をなくすために2016年から2年間で施設数を30%削減するという政策も打ち出されました。
その結果、2014年の政府調査で確認された州内80カ所の施設が、今や35カ所にまで減少しています。閉鎖された施設にいた子どもたちは、どうしても身寄りが見つからない場合、福祉局がほかの施設に移動させることもありますが、経済的な理由のみで施設にいた子どもたちの保護者には2年前から導入された生活保護制度を活用するよう促し、家庭で子どもを養育していくような指導を行っているそうです。
各地方福祉局が施設の設備や教育内容、子どもたちの健康状態、就学状況から指導員の子どもへの接し方に至るまで多岐にわたる項目に従い定期的な査察を始めたのも、この政策によるものと考えられます。
信頼できる運営団体なのか
見分ける三つのポイント
このように現在は一定のガイドラインが公的に示され、施設単体で判断しかねることも行政と協議しながら決められるようになっています。裏を返せば、各施設が子どものバックグラウンドを調査せずに入所させ、寄付金集めの見世物にすることができなくなってきているということになります。
しかし、そもそも政府に登録もせずに活動してしまっている施設を行政が認識するまでは、子どもたちが劣悪な環境に置かれ続けることになります。そういった施設であることに気づかず支援を続けてしまうことは、無責任な運営者に手を貸すことになりかねません。
政府登録や運営許可の有無、入所児童のバックグラウンド、そして卒業生がどのような自立の道を歩んでいるのか、そこに目を向けてみるとその施設の姿が浮き彫りになります。
カンボジアでは政府への各種登録申請には時間を要することがままありますし、子どもたちのバックグラウンドを把握するためには行政職員を伴った現地調査も必須です。施設を出た子どもたちに関しては、その後3年間のモニタリングと行政への報告も義務付けられています。これだけの責任を果たして活動を継続している団体であれば、信頼がおけるといえるでしょう。