【1】社会が求める必要なスキル、能力を獲得することを勧める

 現在のビジネス社会において求められるスキル、能力、および将来の変化をにらんで、適切なスキル・能力開発に邁進(まいしん)せよという考え方である。現実的で「はずれ」が少ない。大企業の経営者や人事部長、人材開発系のコンサルタントなどからよく発せられる言い分だ。現在だと以下のようなスキルと能力を開発すべきだということになっている。

データ分析、AI、プログラミング、英語コミュニケーション、文書化スキル、プレゼンテーション、プロジェクトマネジメント、論理的数理的思考力、人間観察力、傾聴力と調整力、表現力

 まず何と言っても、自分の専門領域を決め、そこで求められるスキルをものにすべく努力することである。どんな業種・職種でもその領域で、必ず習得しておかなくてはならない専門知識や業務スキルはある。

 また、その延長線上に、優れた人なら到達できる知識・スキルがあり、それらは一定程度体系化されている。四の五の言わずにこれらを必ずマスターすべきだというのが新人(ほんとうは新人だけでなく、全員なのだが)には求められるというものである。

 そのうえで、昨今のデータ駆動型ビジネスを実践していくうえでは、データ分析のスキル(とその背景にある統計学的知識)、AIの利用技術と、実際に自分である程度のプログラムを組むスキルなどは、文系理系を問わず習得すべきだといわれている。できる人とできない人では、これからのビジネスにおいて、獲得できるチャンスがまったく違うものになるといわれているし、実際そうであろう。

 そして、英語コミュニケーションである。日本企業のビジネスがスケールアップしていくためにも、あるいは外国からのお客さまと実際にビジネスをしていくには、なんだかんだ言っても英語ができないと話にならないのは現実である。その能力が低いために、日本企業や日本人がどれだけ損をしているかは今さら言うまでもないであろう。

 自分の意思を文書や図によって、しっかり表現していく技術も重要である。現在は、口頭でのコミュニケーションもさることながら、メールやチャット、または各種の資料も含めた書く能力が重要な時代になっている。過不足なくわかりやすいドキュメントを作成できることは必須である。これができないと、まともに仕事が前に進まない。

 そして、プレゼンテーションスキルである。ドキュメントを作成するだけでなく、最終的には人を前にして、その内容がいかに目的にかなったものであるか、それをやるメリットはどんなものがあるか、などを雄弁に語る能力も必要である。あるいは窮地に陥った際にも、どのように打開していくかについて、逃げずに人前に立って語るスキルは必要となる。

 さらには、プロジェクトを前に進めていく、プロジェクトマネジメントのスキルである。まず達成すべき成果を定義したうえで、必要な業務を細かく分解する。それを組み込んで最終の成果にたどり着くまでに必要な資源を確保し、個人に仕事を割り振り、それを実現可能なスケジュールに落とし、また問題が発生した際に、どのように対応するかを取り決めていく。実際に業務を進めるなかで、プロジェクトメンバーのやる気を確認し、プロジェクト進行に緩急をつけたり、レクリエーションを入れたりする。このようなスキルもたいへん重要である。

 以上のようなことが強調される。

 ただ、これらのすべてのスキルと能力を1年や2年でマスターすることは現実的には難しい。真剣に課題に取り組み、スキルと能力の習得に心を配っていれば、10年くらいたてばどこに出しても恥ずかしくない、すぐれたビジネスパーソンになれる。よって、新人は誠心誠意、努力せよ!というのがパターン1の考え方である。