【2】自分の好きなこと、得意なことに、全力をかけて取り組めと勧める
一方で、1を勧めない人たちもいる。1は、もともと地頭が良い“いわゆる優等生”にはいいかもしれないが、そんなことはほとんどの人にとっては無理である。また、最近のとくにAI技術の発展は、1で強調されるほとんどのスキルを不要にするだろう(昔の書道やそろばん等と同じ)。さらには、5年先くらいまではそこそこ予測できても、10年先ともなると誰にもわからない。だから、優等生的に考えるのはやめにしよう。むしろ、自分が取り組んで幸せであり、時間を忘れて熱中できることだけに集中してがんばっていれば、結局それが一番だ!という考え方を勧める人たちである。
ベンチャー起業家やビジネスタレント、経営学や経営に直接関与しない分野の学者などのアドバイスはこちらのパターンが多い。実際に、これらの人たちは、自分自身が好きで得意な領域に特化して成功したこともあり、その発言には一定の説得力がある。
しかしながら、問題もある。自分の好きな領域にのめり込むのはいいが、いつまでたっても日の目を見ないことがある。成功者は「信じて頑張り続ければ夢はかなう!」などと言うが、実際の成功確率は低い。夢はめったにかなわないのである。
また、その領域の特殊な能力やスキルをうまく活かすことのできる上司に巡り合えればよいが、ただの変人として一生を終わる可能性も高い。よって、他者の評価など気にならないほど、好きな領域がある人以外には、現実的にはあまり勧められないように思われる。
私自身は2番目のタイプだし、こちらのほうが好きだし、主観的な満足度は高くなることも知っている。よって個人的には、こちらをお勧めしたい。
理由は、個人的な満足度だけでなく、AIの発展が現在のビジネスに与える影響力がたいへん大きいと個人的に予測しており、1で挙げられているスキルの多くが、近未来にAIに代替される可能性が高いと考えられるからである。
例えば英語のコミュニケーション力は、ネイティブと同等に一つ以上の専門分野について話す技術を持っていれば十分な武器となるが、日常会話や簡単なビジネスには困らないという程度だったら、AIに頼ったほうがよほど確実だろう。
時間をかけて一生懸命勉強して習得しても、不要になってしまう可能性は高い。