本当は2000万円「不足」してはいない

 確かに報告書には「不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる」とはあるものの、同時に「高齢夫婦無職世帯の平均純貯蓄額は2484万円だ」ともシレッと記載されている。つまり、蓄えを取り崩して生活できる範囲で支出をしているというだけで、トータルで不足はしていないのだ。

 さらに、コロナ禍などで家計の収支も変わってきている。今の時点で詳細が公表されている最新のデータは、2021年の「家計調査報告(家計収支編)」だ(https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2021.pdf)。

高齢夫婦無職世帯の家計収支(2021年)。コロナ禍を踏まえ、目下最新の調査となる。 出典:総務省統計局高齢夫婦無職世帯の家計収支(2021年)。コロナ禍を踏まえ、目下最新の調査となる 出典:総務省統計局

 これによると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支は、ひと月の収入が23万6576円で支出が25万5100円となっている。不足分は1万8524円で、2017年時点の不足額の3分の1程度しかない。2万円で計算するとしても、30年で720万円だ。2000万円よりは、現実的に資産形成できそうな額なのではないだろうか。

 加えて、これから高齢者になる世代は共働き世帯が増えていく。夫婦ともに退職金や厚生年金を受給できるということは、収入が増えるということだ。厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(https://www.mhlw.go.jp/content/001027360.pdf)によると、厚生年金の平均受給月額は14万3965円で、国民年金の平均受給月額は5万6479円だという。

 女性の厚生年金平均受給月額は65歳以上で10万9261円であることを考慮しても、単純計算で毎月10万9261円-5万6479円=5万2782円の収入差が出る。つまり、女性がずっと専業主婦だった高齢夫婦よりも共働きだった高齢夫婦のほうが年にして60万円以上年金収入が増えるのだ。

 こうした状況を踏まえて考えると、「老後資金が2000万円ないと足りない」とは必ずしも言えない。2000万円という金額は、あくまで目安にすぎないことが分かる。