テレビ東京「ガイアの夜明け」などテレビで話題沸騰! 京都・西陣織の老舗「細尾」12代目経営者の細尾真孝さん。1200年続く伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)を、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど一流ブランド店の内装に展開するなど、衰退する西陣織マーケットに新風を吹き込む若き経営者だ。その取り組みは、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集める元ミュージシャンという異色の経歴の持ち主。そんな細尾氏の初の著書が『日本の美意識で世界初に挑む』(ダイヤモンド社)。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。細尾氏のユニークな発想法、経営手法の一端を同書から抜粋・編集してお届けする。

【TVで話題!】古い産業にイノベーションを起こす、たった1つの方法<br /><br />Photo: Adobe Stock

様々なジャンルの優れた人たちとコラボして、
自分たちの幅を広げる

 伝統工芸を担う細尾は、バイオテクノロジーやデジタルテクノロジーなど、最先端の技術ともコラボレーションを行なっています。

 これも固定観念にとらわれずに、これは音楽の言葉で言えば「フィーチャリング」(featuring)のような感覚です。様々なジャンルの優れたミュージシャンに客演してもらい、自分たちの幅を広げることです。

 細尾は、この他にも多分野のスペシャリストと様々なセッションを行なっています

 バイオテクノロジーの分野では、蛍光タンパク質を持つクラゲのDNAを蚕(かいこ)に組み込んで、光を変調させる糸で織物を作ったり、数学者やプログラマーと協業して、まったく新しい織の組織を開発したり、温度や環境によって変化する織物を発明したりしています。

 伝統工芸の枠からはみ出るような挑戦を行なうのも、自分自身への挑戦と固定観念を壊すためというのが一つの理由です。

 伝統工芸である西陣織と正反対の位置にある分野と組むからこそ、その対比はインパクトがあり学びの多いものになります。

 その結果、誰もが驚くような、かつてない革新が生まれるのです。

(※本稿は『日本の美意識で世界初に挑む』の一部を抜粋・編集したものです)

細尾真孝(Masataka Hosoo)
株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー、一般社団法人GO ON 代表理事
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス 外部技術顧問
1978年生まれ。1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後、フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。ディオール、シャネル、エルメス、カルティエの店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、デヴィッド・リンチやテレジータ・フェルナンデスらアーティストとのコラボレーションも積極的に行う2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。2019年ハーバード・ビジネス・パブリッシング「Innovating Tradition at Hosoo」のケーススタディーとして掲載。2020年「The New York Times」にて特集。テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」でも紹介。日経ビジネス「2014年日本の主役100人」、WWD「ネクストリーダー 2019」選出。Milano Design Award2017 ベストストーリーテリング賞(イタリア)、iF Design Award 2021(ドイツ)、Red Dot Design Award 2021(ドイツ)受賞。2021年9月15日に初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』を上梓。