リスキリングの期限は
「30代まで」なのではないか

 これだけが根拠ではありませんが、常に学び続ける人生を選んできた立場での正直な感想としては、50代で違う専門性のスキルを再教育で身に付けるのは個人の挑戦としては面白いけれども、企業の投資として捉えるとかなり費用対効果が悪いと思えます。

 逆の見方をすると、企業が高齢の社員に専門性の違うスキルをリスキリングで身に付けさせるにはタイムリミットがあると考えるのが(この考えが社会の理想とは違うことは認識したうえで発言しますが)自然かもしれません。

「コンサルにPythonのプログラミングについて学ばせよう」

 だとか、

「商品企画の社員のスキルの幅を広げるために、アジアの製造工場で実際の物づくり水準を経験させよう」

 などと考えるのであれば、50代ではなく30代までに積極的に再教育を課しておいたほうがいいのかもしれないのです。

 あくまで個人の体験からのアドバイスですが、学ぶ側の立場で見ても30代までにひとつの領域を完成させたうえで40代以降に二刀流になろうとするのは困難なことかもしれません。むしろ20代に二つ、三つ、四つの専門領域を学習して、40代にかけてビジネスパーソンとしてのスキルを完成していったほうが、人間本来の学習能力に向いているかもしれないと思うのです。

 これは言い換えれば、人間の能力を考えると20代と50代ではリスキリングに対する考え方を変えるべきかもしれないという仮説です。