藤本健司 我究館館長から一言!
「上を目指す前に、自分の弱い部分を把握せよ」
都内トップクラスの有名大学・学部を卒業、在学中にフィリピンやドイツへの短期留学経験あり。新卒で入社した財閥系の大手メーカーでは、海外営業を担当。山下さんの経歴であれば、新卒で入社した企業でトップを目指す、あるいは、転職して別のキャリアパスを描くことも夢ではなかったでしょう。
ところが、彼が選んだ道は独立・起業。それも、「将来は上場して創業者利益を得たい」からではなく、「時間の使い方は自分で決める働き方をしたい」という理由です。一般的には、「安定とステータスを捨てて……なぜ?」と言われてしまいそうですね。山下さんの歩みを、キャリア形成目的のイメージから検証してみましょう。
■キャリア形成目的のイメージ比較
●一般的なキャリア形成の目的
大学(就活でガクチカの整理)⇒就職⇒役職・給与がアップ⇒今より好条件なら転職
《イメージ》外部からの評価を積み上げながら、上(=社会的ステータスの向上)を目指していく
●山下さんのキャリア形成の目的
大学(自己の本質を「我究」し就活)⇒就職⇒価値観と仕事内容との比較検証⇒独立・起業
《イメージ》内面(特に弱い部分)をよく見てから上を向き(=他者の価値観を受け入れ)、周囲と協働して社会を変えていく
山下さんが我究館にやって来た直接の動機は、就職する業界探しと面接対策のためだったそうです。それだけ身に付けておしまいだったら、現在の彼のキャリアは、上記の「一般的なイメージ」で進んでいたかもしれません。
小中学校の頃から勉強もスポーツもできるリーダー的存在で、周囲からいつも注目される。そのことに優越感を覚えていた山下さんにとって、高校時代、小学校から続けてきた野球でケガをしてうまくプレーできなくなったこと、大学入試に失敗したことは誰にも知られたくない“人生の汚点”でした。
知らない人は「なぜ、それが汚点?」と思うことでしょう。でも、苦しみや弱みというのは人によって異なります。彼は人一倍「我究」に没頭し、仲間と激しく議論していました。その過程でこのことに気付き、いつしか、就職面接でも自然にこの“汚点”を話題にできるようになったそうです。
とてもつらいことですが、内面ととことん向き合って「ダメな自分」(第1回参照)を受け入れた瞬間がブレークスルーです。気持ちが楽になり、上を向いて歩いて行けると思います。山下さんの場合は、自分の視点で社会を見た時「みんなが週5日働く」という“常識“を疑い始めました。
10年先が見えない今日、お決まりの働き方はすでに古いのかもしれません。「変革」「挑戦」の気持ちを忘れず、人生100年時代の働き方を世の中に問い続けてほしいと思います。
(我究館館長 藤本健司)