「たくさんの人を幸せにしたい」は志望動機か?商社で働く我究館卒業生に実体験を聞いた!「たくさんの人を幸せにする」職業に就きたいと考えた河口公平さん。考え抜いた末、商社を選ぶ決め手になったのは…… イラスト:ソノダナオミ

社会貢献意識の高いZ世代には、企業面接で「たくさんの人を幸せにしたい」を志望動機とする人もいるという。第2回は、我究館卒業生の就活経験を基に「志望動機」について考えてみたい。面接で相手の気持ちをつかむ志望動機とは。その前段階で、自分が進む職業(業種)を選択する際に備えるべき基軸のつくり方と併せて検証してみよう。

「音楽で世界中の人を幸せにする!」
一念発起し高校を中退

――志望動機を言葉にするのは難しいものです。最近の就活生には、「たくさんの人を幸せにしたいと思い、御社を志望しました」という人が少なからずいるとか……。

藤本館長 志望動機は、「なぜ、その企業で働きたいか」を具体的に答えるもの。「たくさんの人を幸せにしたい」は、仕事を通じて自分が社会に与えたい影響、つまり、我究図でいえば「3つの切り口」の中の「Giving」に当たります。

 たしかに、「競争」よりも「共創」や「社会貢献」を重視する「Z世代」には、「たくさんの人を幸せにする」仕事をしたいという人もいるようです。実際、今日体験談を語ってくれる河口さんは、そんな思いを仕事を通じて具現化しようとしている一人です。

「たくさんの人を幸せにしたい」は志望動機か?商社で働く我究館卒業生に実体験を聞いた!河口公平さん(仮名)
大手総合商社勤務。社内起業プランの公募に最年少で採択され、現在は勤務先IT関連会社の経営責任者。中学生の時に感銘を受けた音楽で、「世界中の人を幸せにする」ために高校を中退、歌手を目指す。高卒認定試験に合格し、20歳で大学の経済学部に入学。3年生の時、国家公務員か民間企業かの進路選択に悩み、我究館に入館。イラスト:ソノダナオミ

河口公平さん(仮名) 中学生の時は、「歌や音楽で世界中の人を幸せにしたい!」と思って、本気で世界で活躍する歌手になりたいと考えていたんです。

 1985年に、米国の人気アーティストたちがアフリカの貧困救済のために結集して作った「We Are The World」にすっかり魅了されてしまって。

 この体験が、仕事への価値観の原点でした。もっとも、今はプロの歌手にはならず、商社に勤務していますが(笑)

――河口さんが生まれる10年も前のヒット曲に、なぜそこまで心を動かされたのですか。

河口 楽曲自体が国境や人種を超えて人の心を揺さぶることはもちろんですが、今思えば、遠い国で貧困にあえいでいる子どもたちを支援するチャリティーという「仕組み」も、中学生だった当時には新鮮で共感を覚えたのかもしれません。自分も同じようなことを実現したいというモチベーションで歌手を志しました。

――高校や大学では音楽の道に進まれたのですか。

河口 それが……中学卒業後は、親の期待に応えようと地元の進学校に進んだんです。当然ながら音楽とは無縁の勉強ばかりの毎日。であればなおさら、歌への思いは募り、作曲やプロデュースを行うクリエーターへの憧れの気持ちも高まるわけです。

 具体的な夢があるのに、自分はなぜ進学校に通っているのか。さんざん葛藤した挙げ句、不登校になってしまい、結局、高校は1年で中退しました。でも、後悔はありません。その後は、アルバイトをしながら希望を持って音楽スクールに通ったんです。「これで夢に近づける!」――そう思いました。