それを作るために僕は、自分のほうから相手に対してできることを何でもする、相手の役に立つ存在になろうとしました。つまり「ギブ」から入って、周りの人の信頼を得ようとしたわけです。

 それはグーグルに入っても同じでした。

 言語に始まり、国籍、信条、生活形式など、いわゆる常識の部分から何もかもが異なる外国の人たちと何を使って信頼関係を築いていくかというと、結局は人間性の部分です。わかりやすく言えば、まず草深はいいやつだろうと、好感をもってもらうことが重要なわけです。

 だから、まず自分からギブをして、相手の役に立つ存在になる。そうやって信頼関係ができて初めて本質的なフィードバックがもらえるようになります。

 そのフィードバックにちゃんと応えていると、さらに相手から信頼されるようになり、またよいフィードバックがもらえるようになります。このサイクルが回り出すと、加速度的に必要な情報が必要なときに手に入ってくるようになります。

最初のギブはどんな小さなことでもかまわない

 自分にとって何が正解かわからない未知の環境ということで言えば、まったく知り合いがいない学校も、初めての社会人生活も、自分の常識が通用しないグローバル企業も、同じです。

 そのような状況下では、たくさんのフィードバックをもらって、いろんな情報を取捨選択しながら新しい環境に適応していかなければならない。そんなときに必要となるフィードバックのサイクルの始まりは、あくまでも自分からのギブであるということを、ここでは覚えておいてほしいと思います。

 最初のギブはどんな小さいことでもかまいません。たとえば、挨拶(あいさつ)するときに、こちらから先に挨拶するのだって、立派なギブだと思います。

 大事なのは「自分が相手にできることを何でもする」という気持ちをどんどん行動で示すこと。たとえば思い返してみると、僕が高校に入って最初にやったギブは、同級生の名前を覚えることでした。

 長野県全体から生徒が集まる学校なので、クラスの40人、ほとんど知らない者同士です。教卓に貼ってあったあいうえお順の座席表で全員の名字を覚えました。アカハネ、イイジマ、イチカワ、ウエノ、オノ、オビナタ、コジマ、コバヤシ……。