半導体を制する者がEVを制す#11Photo by Reiji Murai

最先端半導体の国産化を目指す国策会社ラピダスが、米IBMから技術供与を受けて「2ナノ」半導体の量産に向けて本格準備に入った。しかし、最先端半導体の分野で世界をリードする台湾TSMCと韓国サムスン電子には微細化で追いつけない。特集『半導体を制する者がEVを制す』の#11では、台湾・韓国の先行2社に対抗するためのラピダスの「切り札」に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令ニ)

台湾TSMCと韓サムスンがリード
ラピダスが追いつく秘策とは

 北海道千歳市、新千歳空港に隣接する工業団地「千歳美々ワールド」。ラピダスが半導体工場を建設する予定地で、6月にも造成工事が始まる。9月には工場の試作ラインが入る1棟目の施設の建設に入る見通しだ。

 ラピダスは4月25日、日本政府から2600億円の追加支援を受けることが決定した。トヨタ自動車、NTT、ソニーグループなど日本有数の企業8社から計73億円の出資を受けて発足した同社は、22年11月に政府から700億円の補助金を確保している。これにより支援額の累計は3300億円に上った。

 政府の全面支援を受けてラピダスが半導体工場で量産を目指すのは、米IBMが試作に成功した回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)の世界最先端のロジック半導体だ。IBMから技術を習得し、2025年初頭までに試作ラインを立ち上げて、27年初頭の量産を目指す。

 一方で、最先端半導体の量産で世界をリードする台湾積体電路製造(TSMC)と韓国サムスン電子の2社は22年から「3ナノ」半導体の量産に入っており、25年には2ナノ半導体の量産に入る計画だ。

 ラピダス・IBM連合はすでに計画段階から、2社に追いつけていないのが実態だ。それでも、ラピダスはTSMCとサムスンに対抗する“次の戦略”がある。次ページで、IBMとの提携に続いてラピダスが繰り出す「切り札」に迫る。