ニデック(旧日本電産)が電気自動車(EV)向けの駆動装置「電動アクスル(eアクスル)」の拡大路線を転換し、販売計画を下方修正した。その背景にあるのは、日米欧中で相次ぐ競合の台頭だ。特集『半導体を制する者がEVを制す』の#9では、EVの基幹部品のサプライヤーの座を巡る熾烈な攻防に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令ニ)
電池に並ぶEVの基幹部品
ニデックが販売計画を下方修正した理由
世界のEV市場が急激に拡大する中で、電池に並ぶ“EVの基幹部品”を巡る競争が激しくなってきた。
それが、EVの駆動装置である「電動(eアクスル)」だ。モーター、インバーター、トランスミッション(ギア)の三つの部品を一体化した装置で、内燃機関車においての「エンジン+トランスミッション」に代わる自動車の心臓部にあたる。
トヨタ自動車が3月に発売したレクサス初のEV専用モデル「RZ」には、トヨタ、デンソー、アイシンが共同出資する車載部品会社ブルーイーネクサスのeアクスルが搭載されている。
このeアクスルは、トヨタグループとして初めて「SiCパワー半導体」を採用したのが特徴だ。SiCパワー半導体は2017年に米テスラがEVに初採用して以来、EVの航続距離を伸ばす次世代の戦略部品。最新のパワー半導体の搭載で、eアクスルの進化も始まっている(SiCパワー半導体については、本特集♯8『EV向けパワー半導体企業「大胆再編」の行方、ローム・東芝連合とレゾナック陣営が浮上!』参照)。
この流れに沿ってニデックも5月から、第2世代のeアクスルにSiCパワー半導体を搭載した製品の量産を開始して、EV市場の開拓を進める計画だ。
だがその一方で、ニデックは23年3月期決算で23年度以降の販売計画を下方修正した。
EV市場の急拡大とともにeアクスルの市場も広がるのは間違いないが、このタイミングで計画を修正したのはなぜか。次ページでは、その背景にある、競争環境の劇的な変化に迫る。