半導体を制する者がEVを制す#10Photo:undefined undefined/gettyimages

世界の半導体市場が4年ぶりに縮小するにもかかわらず、ホンダやトヨタ自動車系のデンソーが半導体調達の安定化を図る協業が相次いでいる。大手自動車メーカーにとって、半導体不足が自動車の大減産を招いたショックは大きく、「購買部門の弱体化」は自動車メーカーの存亡を左右するレベルにまで達しているのだ。それでは、半導体を筆頭とする部品調達力の強化が急務となっているのはどの自動車メーカーなのか。特集『半導体を制する者がEVを制す』の#10では、買い負け地獄に陥った自動車メーカーを炙り出す。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

ホンダもトヨタ系も半導体調達に躍起!
台湾ファウンドリーとの協業を加速

  4月末、ホンダが世界最大の半導体ファウンドリー、台湾積体電路製造(TSMC)と協業することで基本合意した。昨年、トヨタ自動車系のデンソーも半導体ファウンドリーの台湾聯華電子(UMC)との提携を決めており、5月11日にUMCの日本子会社がパワー半導体の出荷をスタートさせたばかりだ。

  自動車メーカーと半導体メーカーによる距離を縮める動きが加速している。従来は自動車メーカーからみると、半導体メーカーはティア2(二次下請け)やティア3(三次下請け)といった存在であり、両者に直接的な取引はなかった。だが、半導体を使用するサプライヤーを飛び越えて、半導体調達の安定化を図る目的がある。

 新型コロナウイルスの感染拡大以降、日本の自動車メーカーは未曾有の半導体不足に翻弄されてきた。挽回生産を計画するも満足に自動車を造れず減産に追い込まれる事態が3年も続いてきたのだ。

  2023年の半導体市況は4年ぶりの減速となっているものの、車の電動化や自動化に伴って必要となる半導体の逼迫は続く見通しで、自動車メーカーが半導体の囲い込みを急いでいる。特に、駆動用モーターを動かす「パワー半導体」や自動運転に欠かせない「ロジック半導体」を巡り、“唾付け”が目立つようになっている。それくらい、自動車メーカー側に半導体払底に対して強烈な危機感があるということだ。

  それでは実際に、半導体の調達に苦戦した自動車メーカーはどの企業だったのだろうか。次ページでは、日本の大手自動車メーカー7社(トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、スズキ、マツダ、SUBARU、三菱自動車)の半導体を筆頭とする「部品調達力」を徹底比較した。

 半導体不足が招いた自動車減産が3期も続いたことで、いまや、大手自動車メーカーにとって「購買部門の弱体化」は企業の存亡を左右するレベルにまで達している。購買機能の強化が急務となっているのはどの自動車メーカーなのか。