次に、「どの球団に行けば、さらに成功の確率は高まるだろうか?」と考えた。このとき、意識したのは次の2点だ。

・将来的にメジャーに行くときに有利な球団はどこか?
・「40歳でショート」を実現するためにはどの球団がいいのか?

 自分に対して、獲得意思を表明してくれた球団のなかから、こうした観点で「どこのチームに入れば成功の確率は高まるのか?」と考えたのだ。

 こうして選択したのが、タイガースだった。特にタイガースファンというわけではなかった。関西に住んでいたわけでもないし、知り合いがいるわけでもない。あくまでも、「就職先」としてタイガースを選んだだけだったのだ。

 選択の決め手となったのは、タイガースの本拠地である甲子園球場だ。

「高校野球の聖地」としての甲子園球場に強い思い入れがあったわけではない。わたしの場合は、将来的に「メジャーリーガーになりたい」という思いがあったから、そのためには甲子園球場が最適だと判断しただけのことである。

 大学時代に全日本チームの一員としてアメリカで試合をする経験を得た。このとき、メジャーの球場で試合を見て、「こういうところでプレーしたいな」と強く思った。しかし、当時のわたしには大学からいきなりメジャーに行けるほどの実力はなかった。

 そうなれば、まずは日本のプロ野球で実力を磨き、その結果、メジャー行きのチャンスを得るしかないのだと考えた。

 あらためて、それまでの日本人メジャーリーガーを振り返ってみる。

 日本人野手、特に内野手の多くの先輩たちが苦しんだのは土のグラウンド、天然芝のグラウンドへの適応、対応能力だった。先輩たちの多くが、日本時代には人工芝のグラウンドで試合をしていて、メジャー行きに際して、あらためて天然芝対策を講じている姿をいくつも目にしていた。

 ならば、初めから土のグラウンドを本拠地とする球団に入れば、人工芝を本拠地とする球団に入るよりも、早く適応しやすいのではないか?

 大学時代、平日は大学の土のグラウンドで練習をし、週末になると人工芝の神宮球場で試合をしていた。このときの感覚でいえば、人工芝球場でプレーするほうが圧倒的に疲労も残ったし、身体への負担も大きいと感じた。

 これらのことを考慮に入れたうえで、甲子園球場を本拠地とするタイガースへの入団を決めたのである。