斎藤佑樹元プロ野球選手が、セカンドキャリアに“指導者・解説者”を選ばなかった理由Photo by Masato Kato

*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2023」のSPECIAL INTERVIEW「My Career Road」を転載したものです。

一昨年プロ野球選手を引退した”ハンカチ王子”の斎藤佑樹さん。甲子園優勝、大学日本一に輝いたが、プロ野球では長年けがに悩まされた。引退後は自ら会社を設立、”野球未来づくり”というビジョンを掲げ、新たなセカンドステージに踏み出している。(取材・文/上條昌史)

「自分なりのアプローチで、野球界に
恩返しがしたい」

 2021年、現役を引退した元日本ハムファイターズの斎藤佑樹さんは、「株式会社斎藤佑樹」を立ち上げた。プロ野球選手のセカンドキャリアとしては、指導者や解説者という道もあるが、斎藤さんが選択したのは、自らの名前を社名にした起業だった。

「指導者や解説者も素晴らしい仕事だと思うのですが、もっと違うこと、自分なりのアプローチが何かできるのではないかと考えたのです。会社のビジョンとして掲げるのは“野球未来づくり”。野球界に恩返しをしたいという思いが根底にあり、僕が感じてきた野球界の課題を解決していこうと決めました。野球をプレーする選手たちの環境づくり、それを支える親御さんの環境づくり、そこで働いているスタッフたちの環境づくり。あとは僕自身けがが多い野球人生だったので、そこに対するアプローチもしたいと思っています」

 具体的には、現場を見に行くことからスタートした。少年野球の現場に足を運び、子どもを支える親たちの意見を聞いた。他のスポーツの現場を学ぶため、野球以外のスポーツも積極的に観戦している。また仲間がつくったスタートアップ、東京港区・外苑前の野球ジム「Knowhere」(ノーウェア)への出資も行った。「このジムは365日24時間、いつでも野球ができる会員制の野球ジムです。都内ではキャッチボールすらできる場所が少ない、という課題を解決するために生まれました。場所を提供するだけでなく、AI(人工知能)を利用して選手のけがを予防する動画のシステムも開発しようとしている。そんな志に共感して出資を決めました」