写真:東京大学の外観東京大学の副学長はChatGPTをはじめとする生成系AIについて「積極的に良い利用法や新技術、新しい法制度や社会・経済システムなどを見出していくべき」と表明した Photo:PIXTA

ChatGPTの登場で、学生が論文やレポート、試験に使うのを認めるか否か、といった議論がある。しかし、ChatGPTの真の問題は、学生ではなく先生の方にある。ChatGPTは、「人による教育」という作業の多くを不要にする潜在力を持っているからだ。そして、その「大学教育のAI化」こそ“人への投資”の特効薬であり、日本にとって最後に放てる逆転打の可能性なのだ。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

ChatGPTの登場で
分かれる対応

 ChatGPTの登場以来、AI(人工知能)が話題に上らない日はない。特に、文章や画像を作ることができる生成型AIの可能性については、どのように影響するか、先の見通しが難しい。例えば、どの職業が近い将来AIに置き換えられるのかといった現実的で下世話なレベルで議論が百出している。

 いずれChatGPT以外の複数の選択肢が利用可能になるだろうが、生成型AIについては、「結構なものが出てきた」と筆者は心から歓迎している。オリジナリティーのない「それらしい」だけの文章や画像などが、自動化されて人間の手を要さなくなることは素晴らしい。

 松本剛明総務相はAIのルールに関して「開発をいたずらに規制する形は望ましくない」と日本経済新聞に対するインタビューで述べた(4月23日朝刊)が、適切な方針だと思う。

 個人にも、企業にも、国にも、使えるものを有効に使う以外の選択肢はない。