在京の大手電力・ガスで人気の就職先は、東京電力(現東電ホールディングス)か東京ガスが定番だった。原発事故を経て待遇では東ガス優勢が続くが、意外な競合JERAの存在感が増している。特集『部長・課長の残酷 給料・出世・役職定年』の#15では、電力・ガス業界の王者の年収と出世事情に迫る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
首都の名を冠する2大インフラ企業
大震災以降「序列」に大変化
首都の名を冠する東京電力ホールディングス(東電HD、2016年3月までは東京電力)と東京ガス(東ガス)。
10年代後半に電気・ガス小売りが全面自由化されて競争環境が激変したとはいえ、昔も今も国内最大手の電力会社は東電HD、国内最大手のガス会社は東ガスのままである。
公益性の高いインフラ関連企業はあまたあれど、電力・ガスはその代表格だ。時に「田舎大名」とやゆされるほど、電力・ガス会社はそれぞれの地域で根を張っているため、学生らが首都圏でインフラ関連企業への就職を目指すならば、「東電か東ガスか」という図式になることが多かった。
それ故か、2社の待遇は拮抗していた。13年前の10年3月期の平均年間給与(単体)は、東電が757万円に対し、東ガスは718万円。ただし連結売上高で約3.5倍もの開きがあり、また財界活動では経団連会長を輩出するなど、会社の格では東電が上だった。
しかし、11年3月の東電福島第一原子力発電所の事故で状況は一変する。東電は社員の給与が激減し、事実上の国有化もされた。その過程で自主退職したり、希望退職者募集に応じたりした管理職、一般職は少なくなかった。
東ガスと比較して待遇ではダメダメになった印象の東電HD。だが、原発事故から12年を経て、「意外と悪くない」(ある東電HD管理職)という。どういうことか。
次ページでは、東電HD・東ガスの年収・出世の比較と、近年存在感を高めている新たなライバルJERAの待遇について詳報する。