運動するのに、健康の効果を上げる簡単な方法があります。 !と健康になる技術 大全の著者、林英恵さんは言います。
本連載では、「食事」「運動」「習慣」「ストレス」「睡眠」「感情」「認知」のテーマで、現在の最新のエビデンスに基づいた健康に関する情報を集め、最新の健康になるための技術をまとめていきます。今回は、「運動効果を上げる簡単な方法」についてです。(写真/榊智朗)
監修:イチローカワチ(ハーバード公衆衛生大学院教授 元学部長)

【公衆衛生学者が教える】せっかくやるなら押さえておきたい、運動効果をさらに上げるたった一つの方法Photo: Adobe Stock

健康の効果を上げる超簡単な方法

 体を動かすのに気持ちの良い季節になりました。

 運動するのに、健康の効果を上げる方法があります。

 それは「誰かと一緒に」体を動かすことです。

 できれば、スポーツのコミュニティ(ウォーキングの会や、ヨガのコミュニティなど)に所属するとより良いです。

チームスポーツに参加することは個人でスポーツするよりも健康に良い

 また、チームスポーツに参加することは個人でスポーツするよりも健康に良いとの研究結果もあります(*1)。これにより、体を動かすことの健康のメリットを、より幅広く享受することができるからです。

 日本の高齢者の研究でも、誰かと一緒に運動することで、自分で健康だと感じる度合い(主観的健康感)が高くなったり、うつのリスクが半減したりすることが報告されています(*2-4)。

死亡率にも関係する主観的健康観

 ちなみに、主観的健康感は死亡率とも関連しています(*2,3)。

 他にも、スポーツのクラブ活動などに参加することで、要介護になる確率(*5)や転倒する割合が下がったりする傾向があり(*6)、人と運動するメリットが明らかになっています。

 これは、運動することでの直接的な体への効果だけではなく、人との交流やつながりが生まれることで、健康へのさらなるメリットが生まれるからだと考えられます(*2,5,6)。

個人スポーツもあえてチームで行う

 1人で行えるようなランニングやヨガ、ウォーキングなどのスポーツでも、友人たちとグループで行ったり、コミュニティのメンバーになってみてはいかがでしょうか?

 どうせ行うのであれば、一石二鳥で健康の効果を高められるので効率が良いでしょう。

【参考文献】

*1 Andersen MH, Ottesen L, Thing LF. The social and psychological health outcomes of team sport participation in adults: an integrative review of research. Scand J Public Health. 2019;47(8). 52
*2 Kanamori S, Takamiya T, Inoue S, Kai Y, Kawachi I, Kondo K. Exercising alone versus with others and associations with subjective health status in older Japanese: the JAGES cohort study. Sci Rep.2016;6(1):39151. 53
*3 金森 悟. 運動で死亡リスク減「一人で」するより、誰かと「一緒に」. 東京医科大学; 2017 [cited 2021 Dec 17]. Available from: https://www.jages.net/library/pressrelease/?action=cabinet_action_main_download&block_id=967&room_id=549&cabinet_id=20&file_id=7599&upload_id=9195. 54
*4 Kanamori S, Takamiya T, Inoue S, Kai Y, Tsuji T, Kondo K. Frequency and pattern of exercise and depression after two years in older Japanese adults: the JAGES longitudinal study. Sci Rep. 2018;8(1):11224. 55
*5 Kanamori S, Kai Y, Kondo K, Hirai H, Ichida Y, Suzuki K, et al. Participation in sports organizations and the prevention of functional disability in older Japanese: the AGES cohort study. PLoS One. 2012;7(11).
*6 Hayashi T, Kondo K, Suzuki K, Yamada M, Matsumoto D. Factors associated with falls in community-dwelling older people with focus on participation in sport organizations: the Japan Gerontological Evaluation Study project. Biomed Res Int. 2014;2014:537614.

(本原稿は、林英恵著『健康になる技術 大全』から一部抜粋・修正して構成したものです)

【公衆衛生学者が教える】せっかくやるなら押さえておきたい、運動効果をさらに上げるたった一つの方法林 英恵(はやし・はなえ)
パブリックヘルスストラテジスト・公衆衛生学者(行動科学・ヘルスコミュニケーション・社会疫学)、Down to Earth 株式会社代表取締役、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任准教授、東京大学・東京医科歯科大学非常勤講師
1979年千葉県生まれ。2004年早稲田大学社会科学部卒業、2006年ボストン大学教育大学院修士課程修了、2012年ハーバード大学公衆衛生大学院修士課程を経て、2016年同大学院社会行動科学部にて博士号取得(Doctor of Science:科学博士・同学部の博士号取得は日本人女性初)。専門は、行動科学・ヘルスコミュニケーション、および社会疫学。一人でも多くの人が与えられた寿命を幸せに全うできる社会を作ることが使命。様々な国で健康づくりに携わる中で、多くの人たちが、健康法は知っていても習慣づける方法を知らないため、やめたい悪習慣をたちきり、身につけたい健康法を実践することができないことを痛感する。長きにわたって頼りになる「健康習慣の身につけ方」を科学的に説いた日本人向けの本を書きたいと思い、『健康になる技術 大全」を執筆した。
2007年から2020年まで、外資系広告会社であるマッキャンヘルスで戦略プランナーとして本社ニューヨーク・ロンドン・東京にて勤務。ニューヨークでの勤務中に博士号を取得。東京ではパブリックヘルス部門を立ち上げ、マッキャンパブリックヘルス・アジアパシフィックディレクターとして勤務後、独立。2020年、Down to Earth(ダウン トゥー アース)株式会社を設立。社名は英語で「実践的な、親しみやすい」という意味で、学問と実践の世界を繋ぐことを意図している。現在は、国際機関や国、自治体、企業などに対し、健康に関する戦略・事業開発、コンサルティングを行い、学術研究なども行っている。加えて、個人の行動変容をサポートするためのライフスタイルブランドの設立準備中。2018年、アメリカのジョン・ロックフェラー3世が設立したアジアソサエティ(本部・ニューヨーク)が選ぶ、アジア太平洋地域のヤングリーダー“Asia 21 Young Leaders”に選出。また、2020年、アメリカのアイゼンハワー元大統領によるアイゼンハワー財団(本部・フィラデルフィア)が手がける、世界の女性リーダー“Global Women’s Leadership Fellow”に唯一の日本人として選ばれる。両組織において、現在もフェローとして国際的な活動を続ける。
『命の格差は止められるか ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業』(小学館)をプロデュース。著書に、『健康になる技術 大全」(ダイヤモンド社)、『それでもあきらめない ハーバードが私に教えてくれたこと』(あさ出版)がある。
https://hanahayashi.com/