外食、レジャー、ホテル、小売りなど、訪日外国人客数の急回復でインバウンド関連株が脚光を浴びている。ただし、株価は相当先の業績まで織り込んだ銘柄も目立ち、ここからは銘柄選別が重要になる。『注目テーマをメッタ斬り!“人気株”の勝者・敗者』(全18回)の#7では、「人件費増」「中国人旅行者の消費行動の変化」「SNSの発達」など、新型コロナウイルス感染拡大前の「爆買い」とは違う状況でも強いインバウンド銘柄を紹介する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
訪日中国人の増加はプラス材料だが
インバウンド関連株は二極化へ
「繁華街のラーメン店が大行列」「ホテルの宿泊料金が2倍に」「ポケモンセンターの会計待ちが45分」――。
新型コロナウイルス感染拡大で落ち込んでいたインバウンド(訪日外国人客)消費が急激に復活している。2023年3月の訪日外国人客はコロナ前の19年同月比で約65.8%の182万人にまで回復。22年10月の個人旅行再開以降で最高を更新した。
訪日外国人客の増加はしばらく続く可能性が高い。コロナ前は訪日外国人客の約3割を占めていた中国人旅行者が、19年同月比で約11%までしか回復していないからだ。
コロナ前は7年連続で訪日外国人客が過去最高を更新していただけに、数少ない日本の成長産業といっていいだろう。中長期では大阪・関西万博や大阪IR(統合型リゾート施設)も好材料だ。またコロナ前と比較すると1人当たりの消費額も増加している。
「コロナ前と比べると、日本の観光地としての割安感が強まっている。円安の影響に加えて、海外の成長率が日本より高い。彼らの購買力が増している」(大和証券の関根哲アナリスト)
ただし、「インバウンド関連株は全て買いか」となると、そう単純な結論にはならない。ホテル、居酒屋、ファミリーレストラン、アパレル、レジャー、鉄道、百貨店……と関連業態が幅広く、業績も玉石混交になりがちだからだ。すでに年初から「インバウンド関連株」は脚光を浴びており、相当先の業績まで株価が織り込んだ銘柄も目立つ。
また、メディアを含めてインバウンドに対する過度な楽観論に警鐘を鳴らす専門家も少なくない。
「当面は最盛期と比べて6割7割まで戻れば万々歳。コロナ前の19年の3188万人越えは、地政学的な問題がなければ25年ごろではないか。一方で、政府が掲げる30年に6000万人は難しい。18年から19年にかけて訪日外国人の伸び率が鈍化したからだ」(インバウンドアナリストの宮本大氏)
今後はリピーターの増加やSNSの発達、中国人旅行者の消費行動の変化などにより、同じ業界の中でも選別が進む。中国人旅行者も以前のようなツアーバスで行動して、電化製品の「爆買い」をするスタイルは消滅しつつある。人件費が増加しているため、値上げに付いていけないところも厳しい。
「そもそもインバウンド銘柄について明確な定義はありません。何でもインバウンドにひも付けられるだけに、きちんと見抜かないと痛い目に遭う可能性が高い」(宮本氏)
次ページでは今から期待できるインバウンド銘柄をなさまざまな角度から検証。
前回の中国人旅行者が急増したフェーズで脚光を浴びた企業を紹介しつつ、レジャー、家電量販、ホテル、外食など業界ごとの強弱はもちろん、今から狙うべき銘柄、狙ってはいけない銘柄まで具体的に踏み込んで解説していく。